【疾患概念】
膝靱帯損傷の多くは,前十字靱帯(anterior cruciate ligament;ACL)損傷や内側側副靱帯(medial collateral ligament;MCL)損傷といった,単独靱帯損傷である.膝複合靱帯損傷は,より高エネルギー外傷で生じる複数の膝関節内外の靱帯損傷である(表26-2図).その病態は膝関節脱臼・亜脱臼とほぼ同じであり,骨折などの多発外傷を伴うことも多い.このため他部位の治療が優先されることがあり,初期治療が遅れることもある.複合靱帯損傷を診る場合には,常に膝脱臼が生じた可能性を考慮し,経時的に下肢の血流評価を行わなければならない.
【病態】
膝複合靱帯損傷は,外力により膝関節が(亜)脱臼後に整復された状態と考えられ,その臨床所見は,著明な変形を認めないことを除けば,膝関節脱臼と同様である.膝関節の腫脹,疼痛,皮下出血を認め,損傷された靱帯により種々の不安定性を呈する.膝脱臼と同様に,腓骨神経麻痺をきたしていれば,腓骨神経領域の感覚障害と足関節や足趾背屈が不能となる.膝窩動脈損傷により下肢血流障害を生じるとしびれ感や感覚低下,腫脹を生じる(膝関節脱臼の項→参照).
診断のポイント
血管損傷がなければ,膝関節の不安定性の評価を行う.Lachman test,前方引き出しテスト,後方引き出しテスト,内反・外反ストレステストなどを行う.画像検査は,単純X線に加え,MRIを行い靱帯損傷,半月板損傷,骨折の有無を確認する.
専門医のコンサルテーション
膝窩動脈損傷が疑われれば,直ちに専門病院にコンサルテーションする.足関節上腕血圧比(ankle-brachial pressure index;ABI),API(ankle pressure index,損傷側の後脛骨動脈圧/非損傷側の後脛骨動脈圧)が有用である.ABI<0.9以下,API<0.9で
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