【概略】
下腿は,中枢は膝関節に末梢は足部・足関節につながり,立位時には身体を支持し,運動時には膝関節と足部・足関節の動きを相互に伝え調整する役割を担う,重要な運動器の1つである.下腿の前方,外方,後方は機能別に区画された筋群に覆われる一方,内側は脛骨を被覆する軟部組織に乏しいため,特に中央部では骨折や創傷が難治化しやすく,また下腿に起始を有する筋の機能障害は足部・足関節の運動を妨げ,立位,歩行に影響を及ぼすなどの問題を生じやすい.よって,下腿の痛みの病態を正しく診断し,早期に対策を講じることが下肢機能を維持するうえで大切である.
【病態】
下腿の痛みをきたす主な疾患を,病態別に提示する.
(1)外傷性
骨折,打撲,筋挫傷,肉ばなれ,腱断裂.閉鎖性骨折や筋挫傷では,急性下腿コンパートメント症候群の合併に注意が必要である.
(2)オーバーユース性
Osgood-Schlatter病,鵞足炎,疲労骨折,シンスプリント(過労性脛部痛),慢性労作性下腿コンパートメント症候群,アキレス腱症・周囲炎.
(3)隣接関節疾患性
変形性膝関節症,変形性足関節症,外反扁平足,内反足,尖足など下肢アライメント異常をきたす疾患に伴う下腿痛.
(4)感染性
骨髄炎,蜂窩織炎,壊疽性筋膜炎.
(5)腫瘍性
骨肉腫,Ewing肉腫などの原発性悪性骨腫瘍,骨巨細胞腫,類骨骨腫などの良性骨腫瘍,腫瘍類似病変(骨嚢腫,線維性異形成症など)や転移性骨腫瘍による病的骨折.
(6)神経障害性
腰椎疾患(腰椎椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症,腰椎すべり症など)に伴う下肢痛.
(7)脈管疾患性
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症,閉塞性血栓血管炎など),下腿静脈瘤,血栓性静脈炎,深部静脈血栓症.
(8)骨脆弱性
廃用,骨粗鬆症,関節リウマチ,ステロイド治療などで骨量低下(骨萎縮)をきたしていると,軽微な外力で脛骨,腓骨に骨脆弱性骨折を生じる
関連リンク
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