診療支援
治療

腓骨神経麻痺
Peroneal nerve palsy
渡邊 孝治
(わたなべ整形外科クリニック 理事長〔石川県金沢市〕)

【疾患概念】

 腓骨神経麻痺は,末梢神経麻痺のなかで最も頻度が高いとされている.その原因としては,腓骨神経が体表近くを走行することに関係がある.腓骨神経は坐骨神経より分岐し,大腿後面の中央で総腓骨神経と脛骨神経に分かれる.総腓骨神経は,大腿二頭筋の内側縁に沿って下り,腓骨頭外側を回って下腿前面に出て浅・深腓骨神経に別れる.

 総腓骨神経は腓骨頭に接し表層近くを走行するために,圧迫を受けやすい解剖学的特徴がある.

 浅腓骨神経は,下腿前方コンパートメントを下行したあと,筋膜を貫通して皮下に出る.深腓骨神経は,下腿前方コンパートメントを下行したあと,足関節の伸筋支帯の深層を下り第1中足骨基部高位で皮下に出る.

 末梢では足背,足趾に分布するため外傷を受けやすい解剖学的特徴がある.

【病態】

 膝部腓骨頭での圧迫による麻痺が最も多い.術後の不適切な安静肢位による圧迫,ギプスや牽引架台による圧迫など医原性に発生することが多い.

 また,腓骨神経はほとんど周囲の組織がなく容易に牽引されるため,脛骨高原骨折,膝関節脱臼,腓骨頭骨折などの膝関節周囲の外傷に合併することもある.

 神経腫瘍,糖尿病などによる末梢神経障害をきたす疾患も要因となる.

【臨床症状】

 総腓骨神経麻痺では,足関節および足趾の背屈力が低下あるいは消失し,知覚障害は下腿外側から足背のしびれ感や知覚鈍麻を示す.高度麻痺例では下垂足を呈する.神経圧迫部位や絞扼部位に圧痛やTinel様徴候を認める.

 浅腓骨神経麻痺は下腿遠位部での圧迫で起き,純粋な知覚障害となる.第1~2趾間と第5趾を除く足背部に知覚神経障害が発生し,足を内反することにより症状の増悪を認める.

 深腓骨神経麻痺では,足関節背側の伸筋支帯などの線維組織に圧迫を受けて絞扼障害を起こすことがあり,第1~2趾間の知覚障害が出現する.前足根管症候群とよばれる.


診断のポイント

 腓骨頭付近での

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