1.先天性脛骨列欠損症
【疾患概念】
先天的に完全または部分的に脛骨が欠損している病態で,発生頻度は100万人に1人とされる.
診断のポイント
単純X線像で確定診断と病型分類を行う.Jonesらの分類でⅠ~Ⅳ型に分けられる.臨床的には以下のような所見がある(図27-6a図).
①患側下肢は著しく短縮している(脛骨のみでなく,腓骨や大腿骨の形成不全を伴うことが多い).
②足部の著しい内反尖足変形がみられる.
③足趾欠損を伴うことが多い.
④部分欠損症では膝関節機能が比較的保たれていることが多い.
⑤完全欠損症で大腿四頭筋の低形成が著しい症例では膝関節の自動伸展ができない.
治療方針
膝関節機能の状況にかかわらず著しい足部変形に対する治療が必要となる.装具による保存的治療には限界があり,歩行開始時期には再建か切断かの二者択一を迫られる.膝関節機能が保たれている場合には,再建術により歩行可能な下肢を期待できるが,骨延長術を含めた多数回手術を経たうえで装具装用が必要である.再建が期待できない病態では,切断後の義足装用は合理的な選択肢であり欧米では受け入れられやすい.しかしながら屋内で靴を脱ぐわが国では拒否感も根強く,家族との十分な話し合いが必要である.
2.先天性腓骨列欠損症
【疾患概念】
先天的に腓骨の低形成あるいは無形成をきたす疾患で,頻度は10,000人に1人程度とされる.
診断のポイント
単純X線像で腓骨低形成の程度を評価するAchterman and Kalamchi分類が一般に汎用される.球状足関節はこの疾患でよくみられる.臨床所見には以下のような特徴がある(図27-6b図).
①脚長差(患肢短縮)がみられる.
②外側足趾列の欠損や残存趾の合趾はしばしばみられる.
③足部では尖足,舟底足,外反変形がしばしばみられる.
治療方針
治療目標は支持性の獲得である.保存的治療には,健側と比べて足が小さいこと