【疾患概念】
感染を除く何らかの要因によって生じた距骨の虚血性骨壊死.距骨は体表の6割が軟骨に覆われ,かつ靱帯を除く筋や腱などの軟部組織の付着もない.このような構造特性が好発する理由である.要因の主たるものは距骨頚部骨折など外傷だが,ステロイド投与やアルコール多飲に起因する特発例の報告も散見される.
【頻度】
特発性を含む全体の罹患率は不明である.一方,外傷を契機とするものは,一般にその程度と発生率が相関し,距骨頚部骨折(Hawkins分類)では,1型で0~10%,2型で20~50%,3型で60%以上の確率をもって無腐性骨壊死を生じることが知られている.
問診で聞くべきこと
足関節捻挫のような軽微な外傷でも生じ得るので留意する.特発性を考慮したステロイド使用歴やアルコール摂取量の聴取も行う.
診断のポイント
発症初期に特異的な症状はなく,本疾患を高率に発症し得る患者では常に念頭に置き,慎重な経過観察をする必要がある.診断は画像所見により,単純X線像(図28-14a図)やCT(図28-14b図)ではある程度病期が進行した段階(発症からおおむね4週以降)で骨硬化像として表れる.一方,距骨体部の相対的骨萎縮(Hawkins sign)がこれを否定する徴候として重要(感度100%,特異度57.7%)であるものの,本徴候の欠如が骨壊死の診断を確定するものではない.MRIではより早期から病変を捉えることができる(図28-14c,d図).鑑別疾患として本疾患を挙げた場合は積極的に撮像したほうがよい.
専門病院へのコンサルテーション
確立された治療方針はなく,症例ごとに柔軟な対応を要する.本疾患と診断した症例は足の外科医が在籍する医療機関へ紹介することを勧める.
治療方針
距骨体部圧潰のない,あるいは軽微な症例では無症状な症例も多く,保存治療が第1選択となる.PTB(patellar tendon