【疾患概念】
距骨は,大半の部位を関節軟骨に囲まれて栄養血管の流入部位が限定されているため,血流障害時の血管再生が不利な条件にある.特に距骨体部は,中央~内側後方部までの広い範囲が後内側部から流入する血管の支配下にあり(図28-17図),頚部骨折に同血管の損傷が合併すると,体部の無腐性壊死が高率に発生する.また,転位を伴う体部骨折では,距骨滑車荷重面に関節面不整が残存すると二次性足関節症が発生しやすい.本骨折の取り扱いに際しては,こうした重篤な遺残障害のリスクと発生メカニズムを十分に理解しておく必要がある.
【病型・分類】
(1)頚部骨折
高所転落の着地時に足関節が過背屈強制を受け,脛骨前果が距骨頚部背側に衝突して発生するとされる.高エネルギー損傷では,体部骨片が後方脱臼する場合があり,開放損傷では体外脱転も生じ得る.体部無腐性壊死の発生率は,受傷時の体部骨片転位の程度に大きく依存し,転位が最小限のHawkinsⅠ型では20%未満とされるが,距骨下関節の亜脱臼を伴う同Ⅱ型では50%程度となり,体部骨片の後方脱臼を伴う同Ⅲ型では90%程度となる.
(2)体部骨折
転落外傷などによる後足部軸方向への衝撃で発生するとされる.高エネルギー損傷時には大きな転位や粉砕骨折が生じ,新鮮外傷時の軟骨ダメージに加えて関節面不適合も残存しやすいために二次性関節症のリスクが高い.転位が少ないと,単純X線画像では描出困難となり見逃されやすい.
(3)外側突起骨折
後足部への外反強制時に同部が外果-踵骨間に挟み込まれて発生するとされ,スノーボード外傷に多い.単純X線画像で描出されにくく,外側靱帯損傷と疼痛部位が類似しているために見逃されやすい.主荷重面の損傷ではないが,適切に治療されないと偽関節化や二次性関節症のリスクがある.
(4)後方突起骨折
過底屈強制により,この部が後果-踵骨間に挟み込まれて発生すると
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