【疾患概念】
距骨は,大半の部位を関節軟骨に囲まれて栄養血管の流入部位が限定されているため,血流障害時の血管再生が不利な条件にある.特に距骨体部は,中央~内側後方部までの広い範囲が後内側部から流入する血管の支配下にあり(図28-17図),頚部骨折に同血管の損傷が合併すると,体部の無腐性壊死が高率に発生する.また,転位を伴う体部骨折では,距骨滑車荷重面に関節面不整が残存すると二次性足関節症が発生しやすい.本骨折の取り扱いに際しては,こうした重篤な遺残障害のリスクと発生メカニズムを十分に理解しておく必要がある.
【病型・分類】
(1)頚部骨折
高所転落の着地時に足関節が過背屈強制を受け,脛骨前果が距骨頚部背側に衝突して発生するとされる.高エネルギー損傷では,体部骨片が後方脱臼する場合があり,開放損傷では体外脱転も生じ得る.体部無腐性壊死の発生率は,受傷時の体部骨片転位の程度に大きく依存し,転位が最