診療支援
治療

踵骨骨折
Calcaneal fracture
奥田 龍三
(洛西シミズ病院 顧問〔京都市西京区〕)

【疾患概念】

 距骨下関節内に骨折が及ぶ関節内骨折(60~75%)と及ばない関節外骨折に大別される.関節内骨折は一般に高所からの落下や交通事故など高度エネルギー外傷によるが,高齢者など骨の脆弱性があれば低エネルギー外傷でも生じる.関節外骨折は捻れや筋の牽引力などにより生じる.関節内骨折は後足部の疼痛や変形などの後遺障害が生じやすいことで知られ,これまで多くの治療法が報告されてきているが,いまだ課題の多い骨折の1つである.合併損傷として腰椎骨折や他の下肢骨折がある.

【頻度】

 足根骨骨折のなかで最も頻度の高い骨折であり,全骨折の2%を占め,性別では男性が圧倒的に多い.

【骨折型分類】

 関節内骨折では足部側面X線像によるEssex-Lopresti分類(図28-19a)とCT冠状断像によるSanders分類が,治療法の選択や成績評価の際によく用いられる.関節外骨折には部位別に前方突起骨折,体部骨折,隆起部骨折などがある.

【臨床症状】

 後足部を中心に疼痛を訴え,歩行困難となることが多い.踵骨周辺に腫脹,圧痛,皮下出血斑を認める.足部の腫脹が強くなればしばしば皮膚に水疱が形成される.開放骨折(17%)がまれではなく創の有無を確認する.


問診で聞くべきこと

 外力の程度を知るため受傷原因と肢位,機序を聴取する.落下や交通事故では腰痛やほかの下肢痛について聞き,合併損傷の有無を確認する.受傷前のADL,職業,スポーツ活動を把握することは治療法の選択や後療法に重要である.


必要な検査とその所見

 単純X線検査として足部背底と側面像,踵骨軸射像,Bröden像を撮影し,関節内か関節外骨折かを判別する.関節内骨折では舌状型か関節陥没型かを分類する.関節内骨折では一般にBöhler角(tuber angle of Böhler,正常値:20~40°)は低下し,Gissane角(crucial angle

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