【疾患概念】
足関節外側靱帯損傷は足部内がえし捻挫の代表で,スポーツや日常動作のなかで発症する.軽症例では局所安静や活動制限で治癒するが,重症例では足関節に不安定性を残して変形性関節症に進展することがある.
【病態】
足関節外側靱帯は前距腓・踵腓・後距腓靱帯の3靱帯から構成され,前距腓靱帯が最も損傷しやすく,踵腓・後距腓靱帯損傷が加わると重篤となる.一般に靱帯が引き伸ばされたもの(Ⅰ度),部分断裂(Ⅱ度),完全断裂(Ⅲ度)と分類されるが,靱帯が複数あるため,前距腓靱帯の過伸長または部分断裂(Ⅰ度),同靱帯の完全断裂(Ⅱ度),前距・踵腓靱帯と後距腓靱帯短線維の完全断裂(Ⅲ度)とする長谷川の分類が有用である.後距腓靱帯が完全に損傷されることは少ない.前距腓靱帯は関節包靱帯であり,損傷では局所の出血や腫脹,関節内出血などをきたす.骨軟骨損傷や腓骨筋腱損傷が合併することがある.
小児では,腓骨の下端前方における靱帯性裂離骨折となることが多い.就学前児童では未骨化部位で裂離するため,X線撮影での診断が困難である.
問診で聞くべきこと
受傷肢位の他,慢性捻挫の再受傷と鑑別のため捻挫の既往を聞く.荷重による疼痛の増強があれば,軟骨損傷を疑う.
必要な検査とその所見
(1)視診・触診
足関節外果の前方や下方に腫脹を認めるが,腫脹が広がると部位の視認が困難となる.圧痛は前距・踵腓靱帯の部位を確認する.前距腓靱帯の不安定性は,徒手前方引き出しテストを行い健側との比較で評価する.
(2)画像診断
①単純X線撮影:骨折を除外するために足関節の単純2方向撮影を行う.裂離骨折が多い小児では原口法が有用である.
②ストレス撮影:正面像で内反ストレス,側面で前方引き出しストレス下に撮影する(図28-24図).裂離骨折が多い小児では行わない.
③エコー検査:前距腓靱帯や関節包の乱れや裂離骨折が観察できる.踵腓靱帯は損
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