診療支援
治療

足根洞症候群
Sinus tarsi syndrome
渡邉 耕太
(札幌医科大学保健医療学部 教授(理学療法学第2講座))

【疾患概念】

 足根洞とは,距骨と踵骨の間で距骨下関節の前方に位置する漏斗状の空間である.ここには神経受容体や神経終末があり,足根洞症候群ではこれらへの異常刺激が疼痛を引き起こすと考えられている.主に捻挫などの外傷後に足部外側の長引く痛みを呈する.

【頻度】

 足部捻挫後の後遺障害として多くみられる.

【臨床症状または病態】

 足関節の前外側にある足根洞部の疼痛が主訴で,不安定感を訴えることもある.足根洞内に存在する骨間距踵靱帯や前関節包靱帯の損傷や滑膜炎,神経受容体・終末の障害などの病態が指摘されている.


問診で聞くべきこと

 捻挫などの外傷の既往,特に内がえし捻挫があったかを聞く.捻挫後しばらく経過してから足根洞部の痛みが出現することもある.


必要な検査とその所見

 足根洞部の圧痛を調べる.同部の腫脹や腓骨筋痙性扁平足の有無もチェックする.画像検査ではストレスX線検査による距骨下関節不安定性の確認,MRIによる足根洞部の靱帯損傷や浮腫,滑膜炎を確認する.足根洞内への局所麻酔薬注入の有効性は診断的価値が高い.


鑑別疾患で想起すべき疾患

 距骨外側突起骨折,踵骨前方突起の骨折やそこに付着する二分靱帯損傷,足根骨癒合症,複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)など.


診断のポイント

 足根洞を触知しその圧痛を確認することが重要である.画像は補助診断となり,疑った場合には足根洞内ブロック注射を考慮する(CRPSの場合は注意).


治療方針

 保存治療が主体である.週1回の足根洞内局所麻酔薬とステロイドの注射を数回試みる.腓骨筋痙性扁平足がある場合にはギプス固定も有用である.足の機能が低下している場合が多いので,機能回復のリハビリテーションを行う.疼痛に対する薬物療法も考慮する.保存治療に抵抗する場合,足根洞内の掻爬術が行われる.


患者説明のポイント

 病態をよ

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