診療支援
治療

Lisfranc靱帯損傷
Lisfranc ligament injuries
野口 幸志
(JCHO久留米総合病院 医長〔福岡県久留米市〕)

【疾患概念】

 Lisfranc靱帯損傷は,捻挫などの比較的低エネルギー外傷で生じる内側楔状骨と第2中足骨間の軽微な離開(subtle injury)から,転落などによる高エネルギー外傷に至るものまで存在する.Lisfranc靱帯は,Lisfranc複合体(背側靱帯,Lisfranc靱帯,底側靱帯で構成)に存在する骨間靱帯であるため肉眼では確認できず,診断や治療に難渋する.

【頻度】

 足部捻挫として見逃され,慢性的な経過をたどることも少なくない.持続する疼痛で廃用症候群としての特徴を示す例もみられる.

【病型・分類】

 Nunleyらの分類が多く用いられ,荷重時の足部単純X線正面像によって3つに分類される.内側楔状骨と第2中足骨間の間隙を健側と比較し,開大が明らかでないものをstageⅠ,開大が2~5mmのものをstageⅡ,開大が2mm以上で足アーチの低下がみられるものをstageⅢとしている.

【臨床症状】

 受傷直後から足背部を中心に強い疼痛を訴え,足部の荷重は困難なことが多い.腫脹は足部背側だけでなく底側にも認める.


問診で聞くべきこと

 受傷肢位は必ず確認する.Lisfranc靱帯損傷は,足関節底屈位で足趾が背屈位となり,足部長軸方向に踵部から軸圧とともに回旋力が加わり生じると考えられている.


必要な検査とその所見

 単純X線像で内側楔状骨・第2中足骨間の離開や小骨片(fleck sign)を認める.これらの所見は非荷重時では不明瞭な場合もあり,できる限り荷重下で撮影する.CT検査は健側と比較することで離開の有無を確認できるだけでなく,併存している裂離骨折や亜脱臼も把握できる.また高分解能MRI検査では,Lisfranc靱帯損傷を描出することが可能である.


鑑別診断で想起すべき病態

 第2中足骨骨折などを鑑別する(図28-26).


診断のポイント

 単純X線の所見が乏しい割に臨床症状が強け

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?