診療支援
治療

麻痺足(弛緩性麻痺)
Paralytic foot (Flaccid palsy)
福岡 真二
(福岡県こども療育センター新光園 園長〔福岡県糟屋郡〕)

【疾患概念】

 脊髄前角細胞から筋までの障害によって弛緩性麻痺が起こる.原因疾患には,二分脊椎(脊髄髄膜瘤),ポリオ(脊髄性小児麻痺),脊髄性筋萎縮症(Werdnig-Hoffmann病,Kugelberg-Welander病),Charcot-Marie-Tooth病(遺伝性運動感覚ニューロパシー),進行性筋ジストロフィーなどがある.

【病態】

 前脛骨筋,長趾伸筋,第3腓骨筋の麻痺により下垂足,腓骨筋の麻痺により内反足,後脛骨筋の麻痺により外反足,腓腹筋,ヒラメ筋の麻痺により踵足,足内在筋の麻痺により凹足,鉤爪趾(claw toe)を起こす.麻痺により足関節,足部を正中位に維持できず,体の直立姿勢を保つことができない.

 成長や時間経過とともに,筋腱の拘縮,靱帯の拘縮,骨の変形をも生じる.


問診で聞くべきこと

 原因疾患が診断されていない場合,発症時期,麻痺の進行の有無や速度などの基本的な病歴を聴取し,小児神経科,神経内科へ紹介する.整形外科治療を計画するには,麻痺の原因を特定し疾患の予後を知る必要がある.


診断のポイント

 下肢全体の筋力を徒手筋力テストで調べる.体の直立支持には,大殿筋,中殿筋,大腿四頭筋が特に重要である.足関節,足部については,前脛骨筋(内反背屈筋),長趾伸筋,第3腓骨筋(外反背屈筋),短腓骨筋(外反筋),長腓骨筋(外反底屈筋),後脛骨筋(内反底屈筋),腓腹筋,ヒラメ筋(底屈筋)の筋力を調べ,足の変形の原因(筋力不均衡)を理解する.

 次に大切な評価は,変形がflexible(徒手矯正可能)か,rigid(徒手矯正不能の固い足)かの区別である.


専門病院へのコンサルテーション

 理学療法,補装具で矯正できない固い足に無効な治療を続けても,骨変形を生じ手術矯正を難しくするので,早期に小児整形外科,足の外科へ紹介する.


治療方針

【1】保存療法

 麻痺筋を強化することは不可能なこ

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