診療支援
治療

麻痺足(痙性麻痺)
Spastic foot
柴田 徹
(兵庫県立障害児者リハビリテーションセンター センター長〔兵庫県尼崎市〕)

【疾患概念】

 中枢神経障害による筋の痙縮・筋力不均衡により生じる足部変形を指す.変形は,動的変形と静的変形に分かれる.

【臨床症状】

 足底への不均衡な荷重や,靴や装具の不適合による疼痛,胼胝形成をはじめとした皮膚障害を生じる.立位・歩行の不安定性,あるいは不安定を代償するために生じる下肢痛や腰痛を生じることもある.最終的に歩行困難や歩行距離の低下を引き起こす.


問診で聞くべきこと

 疼痛や皮膚障害の有無,靴や装具の種類と使用状況,各生活環境(家,学校,職場など)での移動手段や生活様式(和式か洋式,階段の有無)などについて聞く.


診断のポイント

 臥位では,足部を構成する各筋の筋力,痙縮,長さ,骨性変形の有無,足の分離運動機能を診る.足部だけでなく,下肢全体(股関節,膝関節)の変形,可動域,痙縮についても知る.次に,立位の姿勢や歩容を観察する.


治療方針

【1】保存療法

 下肢装具により,足底全体に荷重を分散させて,立位歩行を安定させる.強い痙縮や内外反要素のあるものに対しては支柱付き短下肢装具,軽度の尖足変形に対しては足底板や軟性装具,靴型装具を作製する.変形拘縮に対しては,変形に適合させるように装具を作製する.痙縮の強い筋にボツリヌス療法を行う.

【2】手術療法

(1)尖足

 膝屈曲で足関節が中間位になる場合は腓腹筋腱延長術,屈曲しても足関節の底屈が残存する場合はアキレス腱延長術を行う.アキレス腱延長の場合,過延長に注意して,膝伸展で背屈10°程度までにとどめる.

(2)内反・槌趾変形

 変形に応じて,後脛骨筋腱,長趾屈筋,長拇趾屈筋を筋内腱延長する.

(3)自立歩行している片麻痺患者の尖足

 尖足矯正に加えて,後脛骨筋腱あるいは長拇趾屈筋の前方移行術を行う.すなわちこれらの腱を骨間膜より前方に出し,楔状骨あるいは中足骨に固定する.

(4)足根骨間に強い不安定性が存在する場合や,年長となり二次的に骨変形

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