【疾患概念】
アキレス腱皮下断裂は,30~50歳のスポーツ愛好者によくみられ,日常診療で遭遇する機会は多い.レクリエーショナルスポーツ中に受傷することが多く,一般のスポーツ傷害に比べて好発年齢が高いことが特徴である.
【病態】
断裂は加齢に伴う腱の退行性変性を基盤に発生するため,10歳代,20歳代での発生はまれであり,30歳以降に急増し,40歳前後の発生が最も多い.中高年層で盛んなバレーボール,バドミントン,ソフトボール,テニスなどの競技中に多く発生し,踏み込みやジャンプなどの動作で下腿三頭筋に瞬時に急激な負荷が加わることにより腱が断裂する.高齢者では,『転倒』や『階段を踏み外して』など,日常動作のなかで受傷することが多い.
問診で聞くべきこと
受傷時の様子を丁寧に聴取する.そのほとんどが非接触性の受傷にもかかわらず,患者は受傷時の衝撃を『後ろから踵部を誰かに蹴られた』,『ボールが当たった』,『棒で叩かれた』などと表現することが多い.また,受傷時に断裂音を自覚していることも少なくない.受傷前に腱の変性や炎症の存在を疑わせる下腿の鈍痛やつっぱり感といった,前駆症状の有無を確認しておく.
必要な検査とその所見
問診ならびに臨床所見により診断は比較的容易であるため,画像検査は必須のものではないが,補助診断として有用である.単純Ⅹ線検査にて,踵骨や足関節周辺骨折の除外診断を行う.特に高齢者にみられる,アキレス腱付着部の踵骨裂離骨折との鑑別に有用である.また,腱付着部や腱内に,石灰化像や骨化像などの変性所見がみられることもある.
MRIや超音波検査では,断裂部位ならびに断端部の状態が確認できる.超音波検査では,断端部の接触状態の動的な観察が容易であり,特に保存治療において有用である.MRIは初期診断より,治療経過における腱の修復過程を評価する手段として有用である.修復とともに腱は肥厚し,T
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