診療支援
治療

腓骨筋腱脱臼
Peroneal tendon dislocation
鈴木 朱美
(山形大学 講師)

【疾患概念】

 腓骨筋腱脱臼の頻度は,足関節全外傷の0.3~0.5%とまれで,しばしば見逃されることもある.長腓骨筋腱,短腓骨筋腱のうち,脱臼するのはほとんど前者で,後者が脱臼することはきわめてまれである.短腓骨筋腱は,腓骨遠位2/3に起始し,外果後方のやや近位で腱に移行し,外果後方の腱溝を経て第5中足骨部に停止する.一方,長腓骨筋腱は,脛骨外側顆および腓骨外側の近位2/3に起始し,腓骨の遠位1/3で腱に移行し,外果後方の腱溝を経て内側楔状骨と第1中足骨基部に停止する.長腓骨筋腱は長大な遊離腱部を有し,また短腓骨筋腱よりも外側に位置するため,長腓骨筋腱が脱臼しやすいとされる.

【臨床症状】

 新鮮例では足関節外果部の腫脹,皮下出血および圧痛を認めるが,脱臼は整復されていることが多い.陳旧性の場合は,疼痛や脱臼不安感を主訴に来院することが多く,脱臼を再現できれば診断は確定できる.自身で足関節背屈や外がえしで脱臼を再現できることもあるが,徒手的に腓骨筋腱を後方から前方に圧迫することで再現できる(図28-40).


問診で聞くべきこと

 受傷機転を聴取する.受傷機転は,長・短腓骨筋が足関節を底屈させている状態で他動的に背屈され,過大な力が腓骨筋腱にかかり,上腓骨筋支帯(superior peroneal retinaculum;SPR)が外果より剥離して腓骨筋腱が脱臼すると考えられている.


必要な検査とその所見

(1)単純X線像

 外果のSPR付着部付近の裂離骨折を認めることがある.

(2)超音波画像

 長腓骨筋腱が外果を乗り越えて前方に脱臼する状態が動的に観察できる.

(3)CT画像

 腓骨筋腱溝の形成不全の有無を確認する.腱溝の70~80%が凹状であるが,腓骨筋腱脱臼では平坦あるいは凸状であることが多い.

(4)MRI画像(図28-41)

 剥離した支帯,仮性嚢および腱の変性や断裂が診断できる.

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