診療支援
治療

筋肉と痛み
国分 正一
(東北大学 名誉教授/仙台西多賀病院脊椎脊髄疾患研究センター センター長〔仙台市太白区〕)

 原因不明を意味する冠詞「非特異的」の付された疼痛が筋骨格系の痛みの大半を占める.それを学会が「線維筋痛症」や「神経障害性疼痛」で覆わんとし,はたまた「生物・心理・社会的疼痛症候群」なる曖昧な概念が広まりつつある.

 私は大学を定年退職後に「非特異的疼痛」の謎を解くべく臨床研究を始めた.以来15年間に下記の事実が捉えられた.①力を入れていない状態で,横紋筋が硬く触れる緊張亢進の場合(筋硬)と柔らかい場合がある.②有痛では必ず筋硬である(筋硬症).③筋硬では圧痛・圧搾痛が陽性である.④筋硬をelastographyで評価できる.⑤各筋にデルマトームと異なる関連皮膚領域があり,筋硬で痛覚過敏となる.すなわち,痛み閾値が低下する.⑥筋緊張制御の反射機構がある.刺激(input)には,筋自体,骨膜・腱・靱帯などの深部組織と関連皮膚領域からの3つがあり,それぞれ条件の違いによって筋硬が陽性化あるいは陰性化する.例えば,筋の加速的収縮,ストレッチのいずれも2回で陽性,3回で陰性となる.緩徐等速運動で陰性化する.皮膚の擦り30秒未満で陽性,手当て(ソフトタッチ)3秒以上で陰性になる.⑦群として同期的に反応する筋(現在まで39筋を確認)と個別に反応する筋(42筋を確認:ただし,後頭前頭筋と上部眼輪筋は同期)に分けられる.⑧筋への局所麻酔薬注射が反射を抑制する.

 以下を試みられたし.急性期五十肩(責任筋:広背筋)とぎっくり腰(外腹斜筋)が薄筋の3回ストレッチで解消する.むちうち症の頚椎回旋制限(胸鎖乳突筋SM頭)に耳朶の手当て5秒間(念のため)が有効である.Pinprickに対する痛覚過敏のほかに神経学的異常のない足底のしびれ(多くがヒラメ筋と短腓骨筋)が第2,第4趾の手当て5秒間で軽減する.

 日本整形外科学会用語集に初版から筋硬症myogelosisが載っている.臨床・基礎研究が広まり,深ま

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