原因不明を意味する冠詞「非特異的」の付された疼痛が筋骨格系の痛みの大半を占める.それを学会が「線維筋痛症」や「神経障害性疼痛」で覆わんとし,はたまた「生物・心理・社会的疼痛症候群」なる曖昧な概念が広まりつつある.
私は大学を定年退職後に「非特異的疼痛」の謎を解くべく臨床研究を始めた.以来15年間に下記の事実が捉えられた.①力を入れていない状態で,横紋筋が硬く触れる緊張亢進の場合(筋硬)と柔らかい場合がある.②有痛では必ず筋硬である(筋硬症).③筋硬では圧痛・圧搾痛が陽性である.④筋硬をelastographyで評価できる.⑤各筋にデルマトームと異なる関連皮膚領域があり,筋硬で痛覚過敏となる.すなわち,痛み閾値が低下する.⑥筋緊張制御の反射機構がある.刺激(input)には,筋自体,骨膜・腱・靱帯などの深部組織と関連皮膚領域からの3つがあり,それぞれ条件の違いによって筋硬が陽性化あるいは陰