診療支援
診断

瘙痒(かゆみ)
Pruritus, Itch
髙森 建二
(順天堂大学大学院環境医学研究所・所長/皮膚科特任教授)

診断のチェックポイント

定義

❶かゆみとは“搔破したい欲望を起こさせる不快な感覚”と定義されており,外部異物に対する自己防衛反応や全身の異常を知らせるサインの1つである。

❷かゆみは睡眠障害,集中力の低下,労働生産性の低下などを引き起こし,生活の質(QOL)を著しく低下させる

❸かゆみは皮膚疾患だけでなく,悪性腫瘍を含む内臓の異常でも生じるので見逃せない症状の1つである。湿疹,皮膚の乾燥(皮膚瘙痒症),HIV感染症〔後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)〕,内服中の薬剤,食物が原因でも生じることがある。

❹抗ヒスタミン薬など,従来のかゆみ治療法が奏効しないかゆみを難治性かゆみという。皮膚瘙痒症,肝硬変などの慢性肝疾患,慢性腎炎などの腎疾患,透析患者,膠原病などでみられる。皮膚瘙痒症の原因疾患を表1に示す。

❺かゆみ刺激は神経線維(C線維)を介して大脳に達し,かゆみとして認識される。伝達様式により末梢性かゆみと中枢性かゆみがある。

末梢性かゆみ:外部刺激やかゆみメディエイターがC線維神経終末のかゆみ受容器に結合し,生じた神経の興奮が末梢神経→後根神経節→脊髄→大脳に達することで,かゆみが認識される経路である。

中枢性かゆみ:β-エンドルフィン,エンドモルフィンなどのオピオイドペプチドが神経終末あるいは脳脊髄に存在するオピオイド受容器(μ-受容器)に結合することにより生じるかゆみである。肝疾患,腎疾患のかゆみはこの機序による。この場合のかゆみにはκ-オピオイド受容体作動薬のナルフィラフィン(レミッチ)が奏効するが,抗ヒスタミン薬は無効である。

かゆみメディエイターにはヒスタミン,トリプターゼ,サブスタンスP,ロイコトリエンB4(LTB4),インターロイキン(IL)-31,TSLPなどがある。

【1】病歴

❶皮膚疾患の既往歴。

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