診療支援
診断

易感染性
Compromised Host
今井 耕輔
(東京医科歯科大学寄附講座准教授・小児科(茨城県小児・周産期地域医療学))

診断のチェックポイント

定義

❶感染症にかかりやすいことを易感染性といい,その患者(宿主)を易感染性宿主(compromised host)とよぶ。免疫不全症(immunodeficiency)と同義である。

❷感染症へのかかりやすさは,環境要因に大きく左右されるが,現代の先進国における易感染性宿主という定義では,以下の5項目が挙げられる。

1)反復感染:感染症に頻回にかかること。

2)難治性感染:感染症が治りにくいこと。

3)遷延性感染:感染症が長引く,あるいは,病原体を排除できないこと。

4)重症感染:感染症が重症化すること。

5)日和見感染:通常の宿主は感染しない弱毒微生物による感染症に罹患すること。

【1】病歴

❶上記易感染性を呈するかどうかを判断するのに必要な病歴を聴取する。頻回,長引く,治りにくい,などは定量化しにくいので,1つの目安として,成人版「原発性免疫不全症を疑う10の徴候」(日本版)(表1)が参考になる(http://www.nanbyou.or.jp/pdf/10warning-AdultPID2015.pdf)。

❷続発性免疫不全症を疑う病歴の有無も聴取する。栄養,薬剤投与歴(抗癌剤,免疫抑制薬など),放射線照射歴が主なものとなる。

❸罹患した病原体の情報は,原因を考えるうえで最も重要である。細菌(グラム陽性菌なのかグラム陰性菌なのか),ウイルス(RNAウイルスなのかDNAウイルスなのか),真菌,寄生虫に分けて検討する。

【2】身体所見

❶易感染性を生じる重要な原因としてバリアの障害があるため,身体所見をとるときに注意する。外傷,手術痕,体内留置物,皮膚病変,粘膜病変,気道障害などは,易感染性の原因となりうる。

❷原発性免疫不全症のなかには特徴的な身体所見を呈する例もあり,診断の手がかりになること,感染症の症状の1つであることもあることから,髪の毛から足の先,神経所見まで

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?