緊急処置
血管内を流れる血液の粘稠度(viscosity)が上昇すると血流が遅延して滞り,末梢の循環障害をきたす。これにより出血症状や中枢神経症状,眼症状などをきたした場合は,輸液などに加えて血漿交換などの血液粘稠度を低下させる緊急処置が必要である。
診断のチェックポイント
●定義:血液粘稠度の上昇による血流遅滞のために,細血管の脆弱性が高まり,粘膜出血や眼底出血などの出血症状や,循環不全に基づく視覚異常や末梢・中枢神経症状,および心不全などの臓器障害を呈するものを過粘稠度症候群(hyperviscosity syndrome)とよぶ。過粘稠度症候群の症状は,血漿粘稠度(Ostwald法)が4.0 centipoise以上で出現することが多い。血液粘稠度の増加と症状の発現や重症度は相関しており,進行すれば非可逆的な重篤な臓器障害をきたすことがある。
【1】病歴と身体所見
❶臨床症状:出血傾向,眼症状,神経症状,循環器症状など多彩である(表1図)。出血傾向は本症候群で最も頻度が高く,慢性的な鼻出血,歯肉出血などの粘膜出血や消化管出血などをきたす。血小板数や凝固因子が保たれているが,止血困難な出血傾向がある場合には本症を鑑別する必要がある。
❷眼症状:眼症状が本症候群の診断の契機となることも多い。急性に発症する視力障害あるいは間欠的な視力障害を主訴に眼科を受診する症例も多く,眼症状は進行すると失明することもある。眼底所見として,乳頭浮腫や網膜静脈の著明な拡張や屈曲などを認め,進行すると網膜静脈はソーセージ様に拡張し,出血を伴う(図1図)。また網膜中心静脈閉塞症をきたすこともあり,早期の診断や治療介入が必要である。
❸神経症状:頭痛,めまい,眼振などからけいれんや意識障害や昏睡に至る重篤なものまである。
❹その他の症状:血液粘度の上昇による循環血漿量の増加により,うっ血性心不全などの循環器症状
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