診療支援
診断

低血糖
Hypoglycemia
野田 光彦
(国際医療福祉大学市川病院糖尿病・代謝・内分泌内科・病院教授)

緊急処置

 低血糖による症状のある患者を診察した場合,意識があり安全に経口摂取が可能であれば,ブドウ糖(5~10g)(またはブドウ糖を含む飲料水150~200mL)を服用させる。砂糖の場合は倍量(10~20g)とする。α-グルコシダーゼ阻害薬を内服中の場合はブドウ糖を用いるのが望ましい。糖尿病治療薬などの薬剤による低血糖の場合には食事の摂取も求められる。意識障害などにより経口摂取が難しい場合,グルカゴンの筋注,あるいはブドウ糖の静注を施行する。原因の薬剤(スルホニル尿素薬や持効型インスリンなど)や疾患によっては低血糖が遷延することがあり,少なくとも24時間程度の観察と,必要に応じて治療の追加を要する場合がある。

診断のチェックポイント

定義

 血糖値が70mg/dL未満,または,血糖値が70mg/dL以上であっても,動悸・発汗・脱力・意識レベルの低下などの症状があり,血糖値の急速な低下が想定されるときに低血糖として対応する。

【1】病歴

 低血糖を惹起する薬剤の使用,低血糖を来しうる重篤な基礎疾患や副腎不全などの内分泌疾患,インスリノーマ,(膵島腫瘍以外の)腫瘍性疾患などを念頭において病歴を聴取する。

 具体的には,糖尿病の有無,インスリンやスルホニル尿素薬など,血糖降下作用を有する薬剤の使用の有無,アルコールの大量摂取,低血糖が起きる時間帯(食事との関係,食事反応性の低血糖か否か),体重変化の状況(インスリノーマでは増加する傾向)などについて聞き取る。

 低血糖症状をマスクしうるβ遮断薬や,インスリン分泌を促進するシベンゾリンなどの薬剤,インスリン自己免疫症候群を惹起しうるSH基を含む薬剤(チアマゾールなど)の内服やS体のα-リポ酸を含むサプリメントの摂取についても留意する。

【2】身体所見

 低血糖による交感神経刺激症状として,収縮期血圧の上昇や頻脈,発汗(冷汗)がある。さらに血糖値が低

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