診療支援
診断

脂質異常症
Dyslipidemia
野原 淳
(石川県立中央病院・遺伝診療科診療部長)

診断のチェックポイント

❶どのリポ蛋白に異常があるのか(表現型)を確認し,次に原発性か続発性であるかを判断する〔原発性高脂血症()参照〕。

❷続発性では原因への対処で改善することが多い。

❸遺伝性に代表される罹病期間の長い脂質異常症は動脈硬化性疾患ハイリスクであり,動脈硬化症に対する検査を考慮する。

❹家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)など遺伝素因による脂質異常症はプライマリ・ケアでも珍しくない。黄色腫などの身体所見の有無,動脈硬化症の評価,脂質異常症・心血管疾患の家族歴聴取が重要である。

❺動脈硬化性疾患以外では500mg/dL以上の高TG血症は急性膵炎のハイリスクである。

定義:脂質異常症は,主として動脈硬化性疾患リスクとなる高LDLコレステロール(LDL-C)血症,高non-HDLコレステロール(HDL-C)血症,高トリグリセライド(TG)血症,低HDL-C血症を含む概念であるが,広くは低LDL-C血症や高HDL-C血症も含む。表1に診断基準を示す。

【1】病歴

❶発症時期および罹病期間

長期にわたるほど動脈硬化リスクは高くなる。何歳から指摘されたのか,きっかけは健診なのか,疾患の受診なのかを確認する。

FHでは出生時から高LDL-C血症が持続している。

❷自覚症状

多くは自覚症状に乏しいが,動脈硬化性疾患によると考えられる症状(狭心症,間欠性跛行など)に留意する。

FHでは経過中にアキレス腱痛が出現することがある。

TG値500mg/dL以上では膵炎の既往や関連症状を確認する。原発性高カイロミクロン血症では急性膵炎を繰り返していることがある。

❸家族歴:脂質異常症および動脈硬化性疾患(発症年齢も)を中心に家族歴を聴取する。早発性冠動脈疾患家族歴は危険因子の1つである。

❹動脈硬化リスク評価:冠動脈疾患,非心原性脳梗塞,末梢

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