診療支援
診断

失語・失行・失認
Aphasia, Apraxia, Agnosia
大槻 美佳
(北海道大学大学院准教授・保健科学研究院)

緊急処置

【1】言葉が出にくい,話のつじつまが合わない,行動がおかしいなどの症状が急性に出現したら,大脳の疾患を疑い,1)現病歴や発症様式を本人・その場にいた者に確認し,2)迅速に画像診断を行う。

【2】失語・失行・失認は,急性発症の場合,それぞれの症候として出現する場合と,意識障害・注意障害,非特異的な言動の異常,混乱状態などで発症することもあり,精神疾患や認知症と誤認されることがあるので注意が必要。

診断のチェックポイント

定義

❶失語:以下を満たす。

脳損傷・脳疾患による。

いったん獲得した言語機能が従前と比較して低下。

記号としての言語の操作能力の障害(口頭でも,文字を用いても,同様に「言語」自体の理解and/or表出が障害される病態)。

❷失行:運動障害,感覚障害,運動-感覚の連携障害,意図の理解・やる気の問題などに帰すことのできない動作・行為の障害。

❸失認:視覚・聴覚・触覚など,特定の入力方法から,情報を認知できない症候。したがって,一般には,視覚失認,聴覚失認,触覚失認など,入力に用いる様態を接頭に冠して表現される。

他の入力方法では認知できることが診断のポイントである(見てもわからないが,触ればわかるなど)。

ただし,入力方法に依存しない症候で,慣習的に「失認」を冠しているものがある(例:病態失認,左右失認など)。

❹その他:視空間認知の障害として,半側空間無視(unilateral special neglect:USN)がある。病巣の対側の視空間の刺激に対する認知障害を示す病態。

【1】病歴

❶利き手,あるいは利き手の矯正歴,家族歴を確認。

優位半球(言語・行為動作に関係する半球)は,右利き者:95%以上が左側,左利き者:60~70%が左側,その他は右か両側に分散。

左利き者は家族歴があることが多い。

❷いつ,どの場面で,どのような症状があったかを具体的に記載。

【2】身体

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