診療支援
診断

難聴
Hearing Impairment
山岨 達也
(東京大学大学院教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科)

緊急処置

 急性発症の難聴で来院した場合,小脳症状など他の神経症状も伴うときは前下小脳動脈症候群など脳幹・小脳の異常を疑い,MRIなどの画像診断を行う。

診断のチェックポイント

定義

❶「聞こえにくい」という症状であるが,単に「音が聞こえない」だけでなく,「言葉が聞き取りにくい」「音楽などが昔と違うように聞こえる」などの状態を指す。純音聴力検査で算出される平均聴力レベルでは25dBHL以上を難聴とし,軽度難聴は25dBHL以上40dBHL未満,中等度難聴は40dBHL以上70dBHL未満,高度難聴は70dBHL以上90dBHL未満,重度難聴は90dBHL以上とされている。

❷難聴は外中耳の病変による「伝音難聴」と,内耳から聴覚中枢経路の病変による「感音難聴」に大きく分けられる(【3】検査の項を参照)。

【1】病歴

❶難聴の発症が急性か:突発性難聴やムンプス難聴などの急性感音難聴では早期に入院加療を検討する。

❷難聴が反復性や変動性か:Ménière病や前庭水管拡大症などでは難聴が反復し,聴力が変動しやすい。

❸難聴が先天性か:耳小骨奇形や一側高度難聴(聾)などは先天性に生じる。

❹難聴以外に症状はないか:前下小脳動脈症候群では下位脳神経症状や小脳症状を,Hunt症候群では外耳水疱や顔面神経麻痺を,ムンプス難聴では耳下腺腫脹を,Usher症候群では視力障害を伴う。

❺誘因はないか:ロックコンサートなど強大音への曝露歴があれば音響外傷を,アミノ配糖体抗菌薬,白金製剤などを用いた治療後の発症では薬剤性感音難聴を疑う。

【2】身体所見

❶鼓膜が正常か:鼓膜に異常があれば伝音難聴である。鼓膜が正常の場合,多くは感音難聴であるが,まれに耳小骨奇形,耳硬化症などの伝音難聴も存在する。

❷鼓膜に異常がある場合

発赤・膨隆では急性中耳炎,穿孔では慢性中耳炎や外傷,貯留液やニボーでは滲出性中耳炎,鼓膜の陥凹・痂皮・de

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