診断のチェックポイント
●定義
❶自覚的耳鳴と他覚的耳鳴:耳鳴とは外部からの音刺激がないにもかかわらず音を自覚する感覚であり,外部から確認できない自覚的耳鳴と外部から確認しうる他覚的耳鳴とに分けられる。耳鳴のほとんどは自覚的耳鳴である。
❷急性耳鳴と慢性耳鳴:日本聴覚医学会・耳鳴診療ガイドライン開発研究班では,欧米の診療ガイドラインと同様,急性耳鳴を3か月未満の持続,慢性耳鳴を3か月以上の持続,と定義している。
❸耳鳴をみる頻度:わが国では欧米の報告と同様,一般人口の10~15%が絶え間ない耳鳴を自覚し,高齢者においてその比率は高まる,としている。特に耳鳴を苦痛と感じ日常生活に支障をきたす「耳鳴症」患者は,一般人口の2~3%と看過できない比率である。
❹耳鳴診療ガイドライン研究班により,わが国の「標準耳鳴検査法1993」および米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNS)のガイドライン(2014年)なども踏まえた「耳鳴診療ガイドライン2019年版」が発刊となった。
【1】病歴
❶既往の聴取:全身状態として,貧血,高血圧,低血圧,神経症,うつ病で自覚的耳鳴をきたすことがあるため,これらの既往を確認したい。
❷自覚的耳鳴の原因鑑別
■多くは感音難聴に随伴するが,感音難聴の原因は不明なものが多い。加齢性難聴,突発性難聴,騒音性難聴,Ménière病,聴神経腫瘍などを鑑別する。純音聴力検査上で難聴が認められないにもかかわらず生じる無難聴性耳鳴でも,検査可能周波数外の感音難聴が存在すると考えられている。
■伝音難聴をきたす外傷性鼓膜穿孔,耳管狭窄症・開放症,滲出性中耳炎,慢性中耳炎,耳硬化症などでも自覚的耳鳴を訴える場合がある。
❸他覚的耳鳴の原因鑑別:非常にまれであるが,アブミ骨筋攣縮,口蓋ミオクローヌスや動静脈奇形,走行異常といった筋性,血管性のものが挙げられる。
❹鑑別のためには,ここに挙げた中内耳