診療支援
診断

嚥下障害
Dysphagia
香取 幸夫
(東北大学教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室)

緊急処置

【1】嚥下障害を主訴に救急を受診する患者は少ないが,急に飲み込めなくなった,むせてから急に苦しくなった,という患者には異物を疑う。

【2】呼吸状態を確認する:誤嚥に起因する気道異物が疑われる場合,呼吸状態に応じて気道確保や酸素投与をするとともに,喉頭や気管の内視鏡検査を実施する。

【3】病歴から食道異物が疑われれば,上部消化管内視鏡検査を行う。

診断のチェックポイント

❶呼吸機能と気管切開の有無を確認する。

❷水分栄養状態を確認する。

❸嚥下機能低下や誤嚥を示唆する病歴を確認する。

❹嚥下に影響する全身の機能を確認する。

❺局所の嚥下器官の機能を確認する。

【1】病歴

❶食事中ならびに食後のむせ,咳,痰の有無。

❷経口摂取の量。脱水の所見の有無。

❸食事に要する時間(30分以上は嚥下障害を疑う)。

❹痰への食塊の混入,口臭の有無。

❺唾液の処理の可否。流涎の有無。

❻構音障害の有無。

❼脳血管障害の既往。

【2】身体所見

❶誤嚥による肺炎や異物を示唆する呼吸障害や発熱の症状をみる。

❷水分栄養障害による,るい痩,皮膚・口腔の乾燥の症状をみる。

❸摂食嚥下機能低下にかかわる,体幹,四肢の運動機能や認知度を含む精神機能の低下の有無をみる。

❹嚥下に関係する局所器官である,舌・咽頭の運動,構音の状況をみる。

❺嚥下障害を示唆する,口腔や咽頭の唾液貯留,食物残渣,ならびに音声の異常(湿性嗄声,気息性嗄声,無力性嗄声)の有無をみる。

❻反復唾液嚥下検査として,空嚥下での喉頭挙上をみる:30秒間に2回以下しかできない場合,嚥下障害が示唆される。

❼水飲み検査を行い,少量の水嚥下で呼吸状態やむせの有無をみる。

【3】検査

❶嚥下内視鏡検査(図1):ベッドサイドや外来で可能な,低侵襲な検査である。代表的な観察項目を以下に記す。

下咽頭の唾液貯留の程度。

喉頭の防御反射。

検査食(着色水)嚥下での嚥下反射惹起の程度。

検査食嚥下後の

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