診療支援
診断

口臭
Halitosis
森田 学
(岡山大学大学院教授・予防歯科学分野)

診断のチェックポイント

定義

❶「口臭」:本人あるいは第三者が不快と感じる呼気の総称である。口腔内で産生される臭気,鼻咽喉や気管で産生される臭気,生体内の代謝産物として肺から排出される臭気が口腔を経由して排泄される。

❷「口臭症」:実際の診療現場では,臭気レベルの低下を目指すのみでは不十分な症例が散見される。そこで,日本口臭学会の指針では,口臭の有無にかかわらず本人が口臭に悩む状態を「口臭症」と定義している。

【1】病歴

❶いつごろから口臭に悩んでいるか,気づいたきっかけは何か,1日のうちで口臭が最も強くなるのはいつか。

起床直後,空腹時,口腔内が乾燥したときなどに自覚する口臭は誰もが経験する。原因疾患もなく,特別な対応は必要ない。

口臭を意識してからの期間は,長いほど不安の程度が強い。

❷口腔乾燥感,口の中がネバネバする感じ,いびきをよくかくか(→薬物の副作用,口呼吸,睡眠時無呼吸症候群,Sjögren症候群)。

❸服用中の薬(向精神薬,降圧薬,抗Parkinson病薬,鎮痛薬など→口腔乾燥),既往歴。

【2】身体所見

❶どのような悪臭か

腐った卵の臭い・硫黄の臭い(→口腔乾燥症,歯周病,壊死性歯肉炎,口腔癌,清掃不良,舌苔)。

魚くさい臭い(→トリメチルアミン尿症)。

柿の腐ったような臭い,アセトン臭・甘酸っぱい臭い(→糖尿病性ケトアシドーシス)。

アンモニア臭(→腎不全,尿毒症)。

食塊の腐敗臭(→食道癌,食道狭窄)。

❷口腔内所見

歯肉の発赤や腫脹,歯の動揺(→歯周病,糖尿病)。

舌苔の付着。

口腔粘膜の乾燥(→薬物の副作用,Sjögren症候群,睡眠時無呼吸症候群,口呼吸)。

❸口腔外所見

扁桃腺付近の乳白色の小塊(→膿栓)。

発熱,鼻粘膜や扁桃腺の炎症(→慢性副鼻腔炎,扁桃腺炎)。

呼吸不全(→肺膿瘍,肺壊疽,気管支炎,喉頭癌)。

全身倦怠感,腹部膨満感,腹痛(→肝硬変)。

ゲップ

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