緊急処置
【1】急性に発症し進行する対麻痺:迅速に鑑別診断を行い,疾患に即した緊急措置を要する。
【2】外傷などに関連した対麻痺:骨折や血腫による急激な脊髄圧迫で不可逆的な神経損傷に陥ることがある。外科手術の適応を視野に入れてMRIを撮像し,整形外科や脳神経外科と連携する。
診断のチェックポイント
●定義
❶対麻痺とは:両下肢の運動麻痺であり,歩行障害を示す。通常は胸髄以下の脊髄障害によることが多いが,頭蓋内病変や末梢神経障害でも生じる。対麻痺は痙性対麻痺と弛緩性対麻痺に分類される。
■痙性対麻痺:脊髄の錐体路が障害されるために下肢の筋緊張亢進,痙縮,腱反射の亢進を伴う。
■弛緩性対麻痺:馬尾損傷,末梢神経障害でみられ,下肢の緊張が低下した状態である。ただし,錐体路障害でも脊髄障害の急性期では弛緩性対麻痺になることがある。
❷病変と障害のレベル:まずは対麻痺をきたしている病変が,大脳,脊髄,前角細胞,末梢神経のどのレベルにあるかを鑑別する。脊髄病変であれば,運動麻痺・感覚障害のレベル,腱反射,膀胱直腸障害などからその障害レベルを推定できる。通常は,筋障害による両側下肢の筋力低下は対麻痺とよばない。
【1】病歴:対麻痺はさまざまな病態により生じるので,年齢,発症様式,経過を詳しく聴取する。さらに随伴する疼痛,発熱,感覚低下,膀胱直腸障害,前駆症状(感冒症状や下痢)の有無を聞く。
【2】身体所見
❶神経診察で痙性対麻痺か弛緩性対麻痺かを鑑別する。
❷痙性対麻痺では,筋緊張の亢進,下肢腱反射の亢進,膝・足クローヌス,Babinski徴候が出現する。歩行は突っ張り歩行,はさみ足歩行を示す。
❸弛緩性対麻痺では,筋緊張の低下,下肢腱反射の低下・消失,著明な筋力低下を示す。
【3】検査:病巣部位や原因疾患の確定のために,脊椎X線写真,CT,MRIが有用であり,さらに髄液検査,筋電図などを行う。
❶MRI:外傷性脊髄
関連リンク
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