診療支援
診断

肝性脳症
Hepatic Encephalopathy
吉治 仁志
(奈良県立医科大学教授・消化器・代謝内科)

緊急処置

【1】肝性脳症で意識障害を伴う場合は,気道確保など生命維持に必要な処置を行いつつ,家人から問診を行うなど肝性昏睡の誘因を特定する。

【2】通院中の肝疾患患者であれば,これまでの臨床経過とアンモニア値や肝機能悪化などから診断は比較的容易であるが,初診救急患者では意識障害をきたす疾患すべてを念頭におきながら診療にあたる。

【3】特に中枢神経系の疾患や低血糖などの代謝性疾患を除外することが重要である。

診断のチェックポイント

定義

❶肝性脳症とは:肝硬変患者において傾眠傾向といった軽度のものから重度の深昏睡に至るまで多様な精神神経症状をきたす合併症で,肝不全の特徴的徴候の1つである。

❷臨床病型分類:顕性肝性脳症の臨床病型は急性型,慢性型,および先天性尿素サイクル異常症など代謝異常に伴う特殊型に大別される。また,顕性の意識障害はないが,精神神経機能検査で異常を認める状態をミニマル脳症とよぶ(表1)。欧米での肝性脳症の分類を表2に示す。

【1】病歴

❶軽症のようにみえても医学的にはある程度の意識障害を有している場合が多いため,家人からの病歴聴取が重要である。

❷肝性脳症の治療では誘因除去が基本となるため,肝性昏睡の誘因となったエピソードを聞いて対処する。

【2】身体所見

❶肝不全に伴う皮膚黄染(黄疸),浮腫,腹部膨隆(腹水貯留)を認める場合が多い。

❷脳症Ⅰ度は臨床的には判定困難なことが多く,振り返って初めて診断できることも少なくない。Ⅱ度になると羽ばたき振戦など診断は比較的容易であるが,尿毒症や低血糖症でも出現することがあるので鑑別が必要である(表3)。

【3】検査

❶検体検査

一般肝機能検査,肝予備能(アルブミン,プロトロンビン時間,コリンエステラーゼなど)とともにアンモニア値を測定する。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)/芳香族アミノ酸(AAA)モル比(Fisher比)の低下を認めるが,最近で

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