診療支援
診断

尿閉
Urinary retention
北村 寛
(富山大学教授・腎泌尿器科学)

緊急処置

【1】12F程度のネラトンカテーテルを尿道から膀胱に挿入し,導尿を行う。

【2】留置が必要な場合(両側水腎症を認める場合,発熱性尿路感染症を合併している場合など):16F前後の尿道バルーンカテーテルを挿入,留置する。

【3】尿道カテーテルの挿入が困難な場合:超音波ガイド下で経皮的膀胱瘻造設術を行う。

診断のチェックポイント

定義:膀胱内の尿を全く排尿できないか,排出するのがきわめて困難で,多量の残尿(300mL以上が目安)が常時ある状態と定義される。

【1】病歴

❶排尿困難を呈する基礎疾患を有していないか。

男性にみられる基礎疾患:前立腺肥大症,前立腺癌,前立腺炎,尿道狭窄など。

女性にみられる基礎疾患

子宮筋腫,子宮癌,卵巣腫瘍。

Fowler症候群(尿道括約筋弛緩不全)。

男女共通にみられる基礎疾患

膀胱の疾患(低活動膀胱,膀胱結石など)。

脳の疾患:脳血管障害,認知症,Parkinson病など)。

脊髄の疾患:脊髄損傷,多発性硬化症,脊椎変性疾患など。

末梢神経の疾患:糖尿病,骨盤内手術後など。

便秘,結腸・直腸癌。

❷排尿困難をきたす薬剤(過活動膀胱治療薬,消化性潰瘍治療薬,鎮痙薬,Parkinson病治療薬,抗ヒスタミン薬,感冒薬,抗精神病薬など)やアルコールの摂取歴はないか。

【2】身体所見

❶視診,触診および打診にて体表から膀胱が認識できる状態となっている。

❷急性尿閉ではしばしば膀胱痛を伴う。

【3】検査

❶尿閉の診断に用いる検査

腹部超音波検査:膀胱内の尿貯留状況の把握,水腎症の有無の確認。

❷尿閉の原因や合併疾患の精査に用いる検査

膀胱内圧測定

尿流測定

残尿測定

尿沈渣

骨盤CT,MRI

血清前立腺特異抗原(PSA)測定:男性のみ。

血液検査:血算,尿素窒素,クレアチニン,ナトリウム,カリウム,クロール,カルシウム,CRPなど。

原因疾患と頻度

【1】原因疾患については上

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