診療支援
診断

男子性発育の異常
Disorders of Male Pubertal Development
小堀 善友
(獨協医科大学埼玉医療センター・リプロダクションセンター・准教授)

診断のチェックポイント

定義

❶思春期とは

人間が生殖器以外でも外形的性差が生じ,やがて生殖能力をもつようになり,性的に成熟し,心身ともに子どもから大人に変化する時期のことを指す。

一般的に,男児は精巣発育の開始が思春期の始まりとされる。この時期が早すぎる(思春期早発症)もしくは遅すぎる(思春期遅発症)ことが問題となりうる。

❷思春期早発症

男児の思春期早発症では,9歳未満で二次性徴が発来する。精子形成を伴うゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)依存性(中枢性)と,GnRH非依存性(末梢性の性ホルモン作用)とがある。

早期に骨端線が閉じてしまうために将来的に低身長になってしまう可能性があることや,幼い年齢で陰毛などが出現するために,本人や周囲が戸惑う心理的・社会的問題がある。

近年,思春期は過去と比較して早期に開始するようになってきており,従来の基準が再評価されている。

❸思春期遅発症

想定期における性的成熟の欠如である。男児では,14歳までに精巣の増大がない(二次性徴が発来しない),もしくは性器の成長の開始から完了までに5年以上かかることが認められた場合,思春期遅発と診断される。

その約90%が体質性成長遅延(続発性性腺機能低下症)によるものであり,慢性疾患,糖尿病などの内分泌疾患,栄養失調,神経性食思不振,薬物中毒なども原因となる。その他の原因には,原発性(精巣が原因)もしくは中枢性(ゴナドトロピン分泌不全)があり,それぞれ男性ホルモン分泌低下や造精機能低下が起こる。

二次性徴が起こらない,または二次性徴が始まっても途中で停止することもあるが,正常の性機能を示す例もあり,症例によって差を認める。幼児期より小陰茎,停留精巣,尿道下裂,無嗅覚症(Kallmann症候群)などの症状がみられることがある。

【1】病歴:既往歴として,内分泌疾患,全身病,慢性病,中枢神経系外傷,脳腫瘍,放

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