診断のチェックポイント
帯下・外陰瘙痒・外陰痛を主訴とする場合,感染症が原因のことが多いが,感染症以外の原因の場合もあるのでその鑑別には注意を要する。
【1】病歴
❶症状の発症のきっかけや時間的変化を聴取する。
❷月経周期との関連や,閉経の有無,性交歴などに関しても尋ねる。
❸糖尿病などの全身性疾患の合併,抗菌薬などの薬剤の内服,アレルギー性素因に関しても聴取が必要である。
【2】身体所見
❶帯下:診察では,帯下の色,量,性状,臭いを観察する。また外陰と腟壁の発赤,腫脹,潰瘍の有無も確認する。子宮頸部の病変や易出血性の有無,子宮頸管からの膿性分泌物の有無の確認も,後述する病態の鑑別には重要である。
■白色で酒粕様またはチーズ様で腟壁などに塊状に付着している(→カンジダ腟炎)。
■黄色~緑色で悪臭があり,泡沫状である(→トリコモナス腟炎)。
■灰色で漿液性,均質性で特に悪臭を伴う(→細菌性腟症)。
■褐色,血性で腟入口部の違和感,性交時痛などの随伴症状がある〔→萎縮性腟炎(老人性腟炎)〕。
■悪臭を伴う膿性で外陰部瘙痒感,排尿痛,外尿道からの排膿がみられる(→淋菌感染症)。
■子宮頸癌や子宮体癌でも帯下を症状として訴えることがあるので注意を要する。
❷外陰瘙痒:上述した腟炎などの随伴症状として現れることが多く,帯下の性状,皮膚の局所所見の観察が重要である。
■上述したような帯下の異常がある(→それぞれの腟炎)
■帯下の異常がなく,外陰部などに皮膚の異常所見がある(→接触性皮膚炎,外陰ヘルペス,尖圭コンジローマ,毛ジラミ,疥癬,外陰ジストロフィーなど)
■帯下の異常もなく,外陰の皮膚所見もない:心因性の瘙痒感も考えられる。
❸外陰痛
■外陰片側に囊胞性の腫瘤を生じ,その部に疼痛を認める(→Bartholin腺膿瘍)。ただし,慢性化し炎症が落ち着くと疼痛がない場合もある。
■小陰唇の内側に浅い潰瘍や水疱を単発性~多発