診療支援
診断

不正性器出血
Abnormal Uterine Bleeding
綾部 琢哉
(帝京大学主任教授・産婦人科学講座)

診断のチェックポイント

定義:不正性器出血とは月経以外の性器出血を総称するが,患者は出血部位を認識できていないことが多い。欧米では子宮からの出血を重視する英語表記が一般的である。

【1】病歴

❶妊娠時にみられる出血は別途対応する。妊娠の可能性を聴く。

❷月経異常と鑑別する。出血の周期性,前回月経からの期間,持続性,量,疼痛や乳房緊満感などの症状を確認する。

❸子宮内腔以外からの出血(膀胱・直腸由来)を鑑別する。膀胱炎症状や便通の状況を尋ねる。

❹他科疾患の有無と内服薬を確認する。出血性素因となる血液疾患,梗塞の既往(抗凝固薬),高血圧(降圧薬),脂質代謝異常(脂質代謝改善薬),肝疾患,乳癌(選択的エストロゲン受容体調整薬)。

❺月経困難症・過多月経に対する子宮内装置(ミレーナ®)装着,子宮内避妊器具使用の有無を聴く。

【2】身体所見

❶視診・直腸診:性器外からの出血として尿道(カルンケル,血尿),肛門(外痔核)を確認する。

❷視診・触診・腟鏡診:外陰・腟の外傷,潰瘍(→癌,外陰ヘルペス,梅毒,Behçet病),尖圭コンジローマ(外陰・腟・子宮腟部),腟粘膜の炎症と分泌物(→腟炎・萎縮性腟炎)を確認する。

❸腟鏡診:子宮腟部の腫瘍,子宮頸管ポリープを確認する。出血中であれば子宮内腔からの出血か否かを視認する。

❹内診・直腸診:腹壁の緊張の有無,圧痛があればその部位,反跳圧痛の有無,子宮の大きさ,硬さを確認する。子宮・傍子宮結合織・子宮付属器それぞれの圧痛の有無,可動性の有無と移動痛(揺動痛)の有無を確認し,炎症性の出血(子宮頸管炎,子宮内膜炎,付属器炎)を診断する。

【3】検査

❶妊娠反応:尿検査で確認する。絨毛性疾患の補助診断としても重要である。

❷画像検査

超音波検査により子宮内膜の性状(菲薄・増殖期・分泌期),卵巣・卵管の性状(卵胞発育の有無と大きさ)を確認し,月経周期における位置づけを推測する。

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?