診療支援
診断

子宮下垂・子宮脱(骨盤臓器脱)
Uterine Prolapse(pelvic organ prolapse: POP)
岡垣 竜吾
(埼玉医科大学教授・産婦人科)

緊急処置

【1】尿閉:高度の子宮脱では全骨盤臓器脱の状態となり,尿閉をきたす場合がある。

❶膀胱破裂を回避するために緊急的に導尿または膀胱内カテーテル留置を行う。

❷カテーテルが入りにくい場合には脱出臓器を還納する。

❸子宮腟部を同定し手指で把持してゆっくり腟内に戻し,次いで膨隆した腟壁を押し入れる。

【2】臓器不全:痛みは通常なく,脱出臓器が虚血・壊死となることや全身状態が悪化することもまれである。ただし,慢性の排尿障害が原因で水腎症から腎不全となっている場合がある。

【3】出血

❶脱出臓器が機械的刺激により出血し止血を要することがある。

❷子宮脱の治療目的で腟内に留置されていたペッサリーリングの接触により腟壁粘膜に肉芽・潰瘍を形成して出血している場合や,腟壁粘膜下にリングが嵌入・埋没している場合,直腸腟瘻を形成している場合がある。

❸出血部をガーゼなどで圧迫止血し,専門とする医師に依頼・搬送する。

診断のチェックポイント

定義:子宮が下降して子宮腟部が腟入口部まで下降した状態をいう。子宮の一部がなお腟内にあるものを不全子宮脱,子宮全体が腟外に出た状態を全子宮脱とよぶ。近年では子宮だけでなく広く骨盤臓器(尿道・膀胱・子宮・小腸・直腸)の下垂・脱出によるQOL疾患ととらえ,骨盤臓器脱とよぶ。

【1】病歴

❶いつごろからどのような自覚症状があるのか:「立ち仕事をしていると夕方に何か下がってくる」「入浴時やトイレでいきんだ際に陰部にピンポン玉のような膨らみを触れる」「尿が出づらい,残った感じがする」などの訴えが多い。

❷これまでに子宮脱を指摘されたことや治療を受けたことがあるか。

❸排尿,排便,性交渉に支障があるか:下部尿路症状(頻尿,夜間頻尿,尿意切迫感,尿失禁,排尿困難,膀胱痛)やガス失禁,便失禁を伴っている場合がある。また,用手介助(自己還納)により排尿・排便している場合がある。本人からは言い出しに

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