診療支援
診断

窒息
Asphyxia
成松 英智
(札幌医科大学教授・救急医学講座)

診断のポイント

【1】窒息の原因は,気道異物によるものの頻度が高いが,急性喉頭蓋炎やアナフィラキシーなどの喉頭浮腫や,頸部の血腫や腫瘍,絞頸などによる気道の圧迫が原因で起こる場合もある。

【2】窒息の原因によって急激な閉塞状態を一瞬で起こす場合と,徐々に気道狭窄が進行する場合に分かれ,それぞれ対応が変わる。

【3】気道異物の発生頻度は乳幼児,高齢者の順で高く,二峰性の分布を示す。

【4】乳幼児:口に物を含んだ後に,突然驚く,笑う,走って転倒することなどで異物を誤嚥する危険がある。突然の咳嗽,呼吸困難,喘鳴,チアノーゼ,意識障害などをみた場合は気道異物による窒息の可能性を考える。

【5】高齢者:嚥下反射や咳嗽反射が低下している場合や,餅・団子・こんにゃくなどの摂取時には窒息に注意が必要である。

緊急対応の判断基準

【1】異物が気道の部分閉塞と判断され,安定している場合:完全閉塞に移行しないように注意を払いながら,患者を安静に保ちつつ検査,処置を進める。

【2】意識があるが,異物による気道の完全閉塞と判断した場合:背部叩打,腹部突き上げ,胸部突き上げを行って異物の除去をはかる。

【3】意識を失う,もしくはすでにない場合:仰臥位にしたうえで直ちに胸骨圧迫を開始する。喉頭鏡とマギール鉗子があれば直視下で異物の除去を試みる。

【4】浮腫や圧迫などが原因による気道狭窄の場合:まずは気管挿管を試み気道を確保する。

【5】気道異物が除去困難であったり,気管挿管が困難な場合:外科的気道確保が必要で,輪状甲状靱帯穿刺・切開を行う。

症候の診かた

【1】窒息が疑われる患者では,原因が異物かそうでないかを考慮する。

【2】気道の不完全閉塞:意識があり,発声・咳・呼吸が可能であり,吸気時の喘鳴などの呼吸雑音を吸気で認める。

【3】気道の完全閉塞:発声ができず,激しい努力呼吸,シーソー呼吸,陥没呼吸となり,苦悶様症状で不穏状態とな

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