診療支援
診断

骨盤骨折
Pelvic Fracture
田島 康介
(藤田医科大学病院救急科・教授)

診断のポイント

【1】高エネルギー外傷の場合は常に本外傷を念頭におく。

【2】救急外来では単純X線撮影をし,迅速に診断する。

【3】初療時にバイタルサインが安定していても,短時間の経過で出血性ショックをきたすことがある。

【4】高齢者では軽微な外傷で受傷することもあり,また単純X線で診断がつかず,CT,MRIが必要になることがある。

緊急対応の判断基準

【1】搬入前にショックであることがわかっている場合:血液型判明前であってもO型Rh+の濃厚赤血球の輸血準備をしておく。

【2】ショックバイタルで重篤な場合:可及的に輸血や大量輸液などの蘇生処置を施行しつつ,自施設で対応できないと判断した場合はCTなどの精査を行わず,躊躇せずに高次医療機関への転送を急ぐ。

症候の診かた

【1】バイタルサインの確認:重篤な骨盤骨折は多発外傷に合併することが多く,外傷初期診療ガイドライン(JATEC)のABCDEプロトコールに従い診療を進める。本疾患による死亡原因は後腹膜出血であり,出血性ショックに対する止血・循環動態の安定が治療の首座となる。

【2】疼痛:疼痛部位,圧痛の確認を行う。腸骨稜への圧迫による疼痛の誘発も診断の一助となるが,重症な骨盤骨折では転位を助長し出血が悪化するので行ってはならない。また,高齢者では恥坐骨骨折と大腿骨近位部骨折の疼痛が紛らわしいことがある。

【3】出血:骨折部周囲や陰部の腫脹,皮下出血がみられる。また造影CTにて活動性の出血部位や血腫量を評価する。

【4】神経麻痺:仙骨骨折ではL5以下の神経症状を伴うことがある。知覚麻痺,運動麻痺を確認する。

検査所見とその読みかた

【1】単純X線:救急ではCT撮影を前提に,単純X線は正面像1枚だけの撮影で十分である。X線斜位像の撮影は骨折の転位を招くリスクもあり不要である。

【2】CT:微細な骨折も評価でき,再構築像や3D-CTでは関節内骨折の評価や骨折型に

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