診療支援
診断

多発外傷
Multiple Injury
溝端 康光
(大阪市立大学大学院教授・病態診断生体機能管理医学講座救急医学)

診断のポイント

【1】多発外傷とは,身体の複数部位に,重症の外傷が存在するものをいう。

【2】交通事故や高所墜落など高エネルギー受傷機転が原因となる。

【3】外傷初期診療ガイドライン(JATEC)に則って診療するなかで診断する。

【4】個々の外傷の診断よりも救命処置を優先する。

【5】全身のすべての外傷が評価された後に診断できる。

症候の診かた

 すべての外傷患者は,JATECに則って診療する。

【1】Primary surveyと蘇生

❶気道,呼吸,循環,中枢神経の異常,低体温を評価し,生命を脅かす病態に対しすみやかに蘇生処置を実施する。

❷Primary surveyでは,損傷臓器,損傷形態,重症度の診断は不要。

【2】Secondary survey

❶Primary surveyと蘇生により,気道,呼吸,循環の安定化が得られたあとに,頭部から爪先,全身の前と後ろ,神経学的所見を系統的に診察する。

❷血液検査・画像検査などを用いて診断を確定させる。

❸各損傷への根本治療は,secondary surveyが終了してから計画的に実施する。

【3】Tertiary survey:見落とした損傷がないかを確認するために,全身を系統的に繰り返し診察する。

検査所見とその読みかた

【1】Primary surveyと蘇生

❶第1印象:気道,呼吸,循環,中枢神経,体温を15秒程度で評価する。

❷気道の確保と頸椎保護

陥没呼吸・シーソー呼吸・気管牽引・口鼻腔の損傷・異常呼吸音を評価。

必要に応じて気管挿管を実施する。

❸呼吸と致命的な胸部外傷の処置

呼吸様式・呼吸回数・呼吸補助筋の使用・胸郭変形・皮下気腫・呼吸音の消失や左右差・打診での鼓音や濁音から,開放性気胸・緊張性気胸・フレイルチェストを評価する。

必要に応じて酸素投与・気管挿管と陽圧換気・胸腔ドレナージを実施する。

❹循環と止血

皮膚の蒼白や冷感・脈の速さや強さ・血

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