診療支援
診断

一過性脳虚血発作
Transient Ischemic Attack(TIA)
長谷川 泰弘
(聖マリアンナ医科大学教授・脳神経内科)

診断のポイント

【1】局所脳虚血による一過性の局所神経脱落症状であり,症候は24時間以内に完全に消失すること。

【2】その症候を説明する部位に急性梗塞の証拠がないこと。

【3】一側の網膜に生じるものは一過性黒内障とよび,一過性脳虚血発作(TIA)の1つと考える。

【4】迅速なリスク層別化と脳画像診断の施行が重要。

【5】疑似脳卒中(けいれん,片頭痛,低血糖,失神,心因発作など)との鑑別を適宜行う。

緊急対応の判断基準

【1】急性発症の神経症候が存在する場合:いかに軽症であっても,脳卒中(疑い)患者として脳卒中診療施設へ救急搬送する。

【2】症状が消失している場合:病歴聴取が重要となる。正確な情報が得がたい場合でも,まずは「TIA疑い」として対応する。特に発症から数日以内の症例では,以下のうち1つ以上当てはまるものは脳梗塞移行の高リスク患者として,画像診断装置を有する専門医への転送を行う。

❶ABCD2スコア≧4(表1)

❷心房細動

❸Crescendo TIA(1週間に2回以上の発作)

❹責任血管の高度の狭窄,閉塞

症候の診かた

 軽微な局所神経症候の検出には,「顔,腕,言葉と目」に注意を払った診察を行う。同時に,問診から推定される「疑似脳卒中の除外」を念頭においた診察を行う。TIAを100%診断あるいは否定できる神経徴候はないので,TIAの否定は慎重に行う。

【1】軽微な顔面神経麻痺:まつ毛徴候。

【2】軽微な運動麻痺:上下肢Barré徴候,第5指徴候。

【3】軽微な言語障害:物品呼称,言語指示,復唱。

【4】小脳症状:眼振の有無,失調の有無。

【5】視野障害:対座法。

検査所見とその読みかた

【1】頭部画像診断:CTよりも虚血病巣の検出感度が高い拡散強調MRIの施行が望ましい。高リスクTIA疑い例では直ちに,低リスク例でもできるだけ早く施行する。急性梗塞の所見があればTIAではなく脳梗塞となる。

【2】脳血管評

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?