診断のポイント
高血圧性脳症とは,血圧の異常上昇により脳障害が急速に進行し,治療の遅滞が非可逆的な脳障害や,時に致死的転帰を招く,高血圧性緊急症の一種である。頭部CT,MRIで後頭葉から頭頂葉,側頭葉にかけて両側大脳皮質に広がることが多く,その状態はRPLSあるいは可逆性後頭葉白質脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome:PRES)とよばれる。
【1】急性発症の頭痛,悪心,嘔吐,視力障害,けいれん,意識障害などの脳症状を呈し,局所症状を欠く。
【2】多くは急速進行性の高血圧や悪性高血圧,子癇に合併してみられ,治療により血圧が低下すると症状が消失する。
【3】発症時の血圧は長期の高血圧患者では220/110mmHg以上,正常血圧者では160/100mmHg以上の場合が多く,血液脳関門の破綻が原因である。
【4】症状は器質的あるいは代謝性疾患では説明できない。
【5】PRESは過度な血圧上昇を伴わない場合がある。
緊急対応の判断基準
迅速な診断と治療を要するため,疑われる場合は専門病院への移送が望ましい。
症候の診かた
【1】非特異的症候:頭痛,意識障害,けいれんなどを示す。自覚症状としては,発症数日前から頭痛,めまい,視力障害などがある。
【2】運動麻痺,感覚障害:あまりみられない。
【3】神経学的局在徴候:呈することは少ないが,眼底所見で高血圧性変化,うっ血乳頭を認めることがある。
検査所見とその読みかた
【1】血圧:長期の高血圧患者では220/110mmHg以上,正常血圧者では160/100mmHg以上が多い。
【2】尿・血液検査:腎実質性疾患,腎血管性疾患,妊娠,褐色細胞腫,Cushing症候群などの鑑別を念頭に行う。
【3】頭部CT・MRI
❶頭部CT:後頭葉から頭頂葉にかけて,両側大脳白質に広がる低吸収域を認める。
❷頭部MRI:❶と同部位に,
関連リンク
- 今日の診断指針 第8版/脳梗塞(ラクナ梗塞)
- 今日の診断指針 第8版/脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)
- 今日の診断指針 第8版/脳梗塞(心原性脳塞栓症・ESUSを含む)
- 今日の診断指針 第8版/脳内出血(脳出血)
- 今日の診断指針 第8版/くも膜下出血
- 今日の診断指針 第8版/脳静脈洞血栓症
- 新臨床内科学 第10版/2 二次性(症候性)低血圧
- 新臨床内科学 第10版/(2)悪性腎硬化症
- 今日の治療指針2023年版/高血圧性脳症
- 新臨床内科学 第10版/4 全身性強皮症に伴う腎病変
- 新臨床内科学 第10版/狭心症
- 新臨床内科学 第10版/2 脳アミロイドアンギオパチー(脳アミロイド血管症)
- 新臨床内科学 第10版/7 PRES,高血圧性脳症
- 今日の小児治療指針 第17版/もやもや病
- 新臨床内科学 第10版/【3】脳静脈洞感染症