診療支援
診断

脳膿瘍
Brain Abscess
橋本 直哉
(京都府立医科大学教授・脳神経外科学)

診断のポイント

【1】感染症状に脳局所症状を伴う。

【2】大半の患者で頭痛を訴える。

【3】中耳炎などの好発年齢に一致し,30歳台以前の若年者,男性に多い。

【4】発生原因の半数は中耳炎,副鼻腔炎などの耳鼻咽喉感染,小児では先天性心疾患が最も多い。

【5】診断には頭部MRI(単純と造影)または頭部CTが必須である。

症候の診かた

【1】頭痛,発熱などに片麻痺などの脳局所症状,髄膜刺激症候を認めたら本疾患を疑う。

【2】病期は脳炎初期,脳炎晩期,被膜形成期,被膜形成晩期に分けられ,後述の画像所見で差異がみられる([検査所見とその読みかた]【4】参照)。

【3】意識障害,てんかん(急性症候性発作)を伴うこともある。

【4】半数で何らかの感染徴候をみる。

検査所見とその読みかた

【1】炎症所見:好中球増多,CRPの上昇,血沈の亢進などをみる。

【2】頭部単純X線写真や頭部CT:中耳や副鼻腔に感染症の存在を示すことが多い。

【3】髄液検査:細胞数増多などの細菌性髄膜炎の所見を呈するが,被膜形成期,被膜形成晩期では髄液中に必ずしも菌はみられない。なお,腰椎穿刺は頭蓋内圧亢進が著しい場合には禁忌である。

【4】画像検査

❶頭部MRIは必須。脳炎の時期にはT1強調画像で低信号,T2強調画像/FLAIR画像で高信号域として描出される。

❷被膜形成期以降は造影にて比較的円滑で均一な厚さを示すリング状の高信号域(ring enhancement)をみる。その周囲は脳浮腫を示す低信号域を呈する(図1)。拡散強調画像(DWI)では膿瘍は高信号域として抽出される。頭部CTでも同様の所見(ring enhancement)を示すが,最近はMRIで診断することがほとんどである。

確定診断の決め手

【1】頭部MRIなどの画像診断で本疾患を疑った場合:広域スペクトラムの抗菌薬を投与する。これにより病変の縮小がみられれば,脳膿瘍と診断が可能であ

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