診療支援
診断

脊髄空洞症
††
Syringomyelia
鎌田 恭輔
(恵み野病院・副院長)

診断のポイント

【1】発症年齢は10歳台後半~30歳台。

【2】咳・いきみなどで誘発される前胸部・腹部のしびれ,痛み。

【3】宙づり型の温痛覚障害,筋力低下(図1)。

【4】緩徐な症状の進行。

【5】典型的な MRI所見:脊髄中心管の拡大による,空洞症(syrinx)

症候の診かた

【1】発症年齢は比較的若年であり,意識は清明である。

【2】咳などで自発痛,持続的なしびれと錯知覚,さらに温痛覚を主体とする触覚などの解離性感覚障害が特徴的である。また,筋力低下が伴うこともある。

【3】症状は徐々に進行し,空洞が延髄まで上方進展したときには嚥下障害などを併発することがある。

検査所見とその読みかた

【1】血液・生化学的検査:異常を認めない。

【2】MRI

❶頸髄~胸髄レベルの中心管の拡大とそれに伴う脊髄の腫大を認める(図2)。

❷この空洞は脊髄内を交差している痛覚への影響(痛覚鈍麻)が出やすいのが特徴である。また,空洞内に隔壁が多くあり,syrinxは多房性,左右どちらかに偏在していることもある(図3)。

❸脊髄空洞症の原因は,Chiari奇形I型の合併と強く関係している。Chiari奇形I型は小脳・脳幹の一部が大後頭孔を越えて脊柱管内に陥入している(図4)。特に落ち込んだ小脳扁桃先端が大後頭孔から5mm以上下垂していることが診断の基準となる。

❹ ❸に加え,頭蓋頸椎移行部には頭蓋底陥入症などの骨性の異常も伴うことがある。これらの合併により延髄-扁桃周囲の髄液灌流の障害が起こる。

❺T2強調MRIにて癒着性くも膜炎,および脊髄係留,さらに造影MRIにて脊髄髄内腫瘍などの腫瘍性病変の診断を行う。

確定診断の決め手

【1】上肢,前胸部中心の宙づり型の温痛覚・触覚障害と脱力。

【2】腹圧の上昇(咳,いきみなど)で症状の増悪。

【3】画像診断による脊髄空洞症の確認。

【4】頭蓋-頸髄移行部にChiari奇形の合併。

誤診

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