診療支援
診断

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
††
Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy (CIDP)
神田 隆
(山口大学大学院教授・臨床神経学)

診断のポイント

【1】2か月以上にわたって増悪する臨床経過をとる。

【2】運動>感覚障害で自律神経障害は目立たない。

【3】感覚障害は位置覚・振動覚が優位に障害される。

【4】脳脊髄液で蛋白細胞解離がみられる。

【5】末梢神経伝導検査で脱髄所見がみられる。

症候の診かた

【1】典型例では,左右対称性の運動・感覚障害を認める。運動障害が感覚障害より高度である。

【2】感覚障害は遠位部優位にみられるが,筋力低下は神経根の障害を反映して近位筋に強い場合がある。

【3】脳神経が障害されることは少ない。

【4】自律神経系の障害は目立たない。

【5】四肢腱反射は減弱・消失する。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査:通常異常を認めず,一部の症例を除いて特異抗体を有さない。炎症反応も陽性にはならない。

【2】脳脊髄液検査:蛋白上昇,糖正常,細胞数増多なしという形をとる(蛋白細胞解離)。

【3】末梢神経伝導検査:脱髄を示す所見が得られる。

【4】画像検査:脊髄根,馬尾,腕神経叢のMRIや末梢神経エコー検査で神経根・神経幹の腫大をみることがある。

【5】腓腹神経生検:神経周膜下の浮腫,脱髄と再髄鞘化,オニオンバルブ形成,神経束間での脱髄性変化のばらつきなどがみられる。

確定診断の決め手

【1】脱髄性のニューロパチーであることを確認することが診断の第1歩であるが,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)に特異的な診断マーカーはない。

【2】電気生理学的所見に加えて,臨床症候,脳脊髄液所見,画像所見,症例によっては病理所見も加えて総合的に診断する。

【3】最も重要なのはCIDPに似て非なる疾患の鑑別である。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】遺伝性ニューロパチー()

❶脱髄型のCharcot-Marie-Tooth病はしばしば本症と誤診される。

❷幼少時からの筋力低下が疑われる病歴,神経間での差異の少ない一様な電気生理学的所見な

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