診断のポイント
【1】日内変動と易疲労性を有する骨格筋症状。
【2】アセチルコリンレセプター(AChR)抗体,筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体陽性。
【3】エドロホニウム(テンシロン)試験陽性。
【4】反復刺激試験でwaning,単線維筋電図でジッターの増大。
【5】眼瞼の易疲労性試験陽性,アイスパック試験陽性。
緊急対応の判断基準
重症筋無力症(MG)の症状が悪化して呼吸困難を生じた状態をクリーゼといい,すみやかな対応が必要である。
【1】気道確保,胃管挿入,全身管理を行う。
【2】抗コリンエステラーゼ薬が投与されていれば,これを中止し,血液浄化療法(単純血漿交換もしくは免疫吸着療法),あるいは免疫グロブリン点滴静注のいずれかを行う。
【3】そのうえで,ステロイドパルス療法を追加する。
症候の診かた
【1】眼症状
❶最も頻度の高い症候である。
❷眼瞼下垂や眼球運動障害(複視)が出現し,日内変動や易疲労性を伴う。例えば,長時間運転すると中央線が二重に見えるなどの症状は典型的である。
❸症状が2年以上眼症状のみに限局しているものを眼筋型MGという。
【2】全身症状
❶顔面筋力低下,構音障害,嚥下障害,頸筋や四肢筋の筋力低下が生じ,日内変動や易疲労性を伴う。例えば,長時間話すと鼻声になる,ドライヤーで髪を乾かすときに休憩が必要といった症状が現れる。
❷眼症状以外の症状を呈するものを全身型MGという。
【3】呼吸困難:自力で呼吸することが困難で呼吸補助が必要になる状態をクリーゼとよび,上述したように緊急の対応が必要である。
検査所見とその読みかた
【1】抗体検査
❶MGでは約80%の症例でAChR抗体が陽性となる。
❷また,5~10%はMuSK抗体が陽性である。
❸保険診療上AChR抗体とMuSK抗体は同時算定できないので,通常はAChR抗体が陰性だった場合にMuSK抗体を提出する。
【2】眼瞼の易疲労性試験:患者に上