診断のポイント
【1】60歳以上の男性に多い。
【2】傍腫瘍性症候群。
【3】50~60%の症例で肺小細胞癌(small-cell lung cancer:SCLC)が合併。
【4】筋力低下,腱反射低下,自律神経症状。
【5】電位依存性カルシウムチャネル(voltage-gated Ca2+ channel:VGCC)に対する自己抗体陽性。
緊急対応の判断基準
5%程度でLambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)による呼吸不全(クリーゼ)がある。
症候の診かた
【1】下肢筋力低下,腱反射低下,自律神経障害が特徴的であり,眼瞼下垂,複視,頸部筋力低下も認められる。
【2】自律神経症状として,口渇,便秘,発汗低下,排尿障害,勃起障害,霧視があり,非腫瘍性LEMSに比べて,SCLCに合併したLEMSでより重篤である。
検査所見とその読みかた
【1】電気生理学的検査:安静時の単発刺激では複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP)の振幅は低い。2~5Hzの低頻度刺激では重症筋無力症のように漸減現象がみられ,短期間の運動負荷により回復する。20Hz以上の高頻度刺激では,CMAPの振幅の漸増現象(waxing)が認められる(図1図)。
【2】自己抗体検査:抗P/Q型VGCC抗体は,約85%の症例で陽性。
確定診断の決め手
【1】SCLCの経過観察中に出現した歩行障害。
【2】電気生理学的検査と自己抗体測定で確定診断。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
重症筋無力症(→)が鑑別すべき重要な疾患となる。
【1】自律神経障害と腱反射低下がLEMSに特徴的であり,両者の鑑別点。
【2】また重症筋無力症の初発症状として外眼筋や球症状が多いのに対して,LEMSの初発症状は95%が四肢筋力低下(特に下肢)である。
確定診断がつかないとき試みること
抗P/Q型VGCC抗体が陰性の場
関連リンク
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