診断のポイント
【1】圧迫による急性単神経麻痺(運動,感覚)である。
【2】圧迫のエピソードがある。
【3】生理的絞扼部位における慢性的圧迫によって生じる絞扼性ニューロパチーと区別する。
【4】神経伝導検査で圧迫部位での伝導異常を認める。
症候の診かた
【1】手根管症候群:正中神経が手根管で絞扼されて生じる圧迫性・絞扼性ニューロパチーである。
❶Flick sign:夜間・早朝に出現あるいは増悪する手指のしびれ,疼痛が特徴であり,手を振ると徐々に改善することが多い。
❷Tinel徴候:手掌の手根管上を叩打するとしびれが手指尖端に放散する。
❸Phalen徴候:上腕を屈曲かつ手首を屈曲すると(手関節過屈曲位)しびれが誘発され増悪する。
❹Ring finger splitting:環指尺側に感覚脱失がない。
【2】尺骨神経麻痺:肘部管部で尺骨神経が慢性的に絞扼されて生じる。
❶高齢,男性,喫煙,糖尿病などが罹患因子である。
❷第一背側骨間筋萎縮が進むと鉤爪指変形(claw finger deformity)がみられ,さらに進行すると鷲手(claw hand)を呈する。
❸紙を第1,2指で挟んで引くと,麻痺側の第1指第1関節(IP関節)が屈曲する(Froment徴候)。これは尺骨神経支配の母指内転筋の麻痺を長母指屈筋(正中神経支配)が補うためである。
【3】橈骨神経麻痺:上腕骨背側を回旋する部位での橈骨神経の圧迫による急性圧迫性ニューロパチーである。
❶橈側手根伸筋の麻痺による下垂手(wrist-drop),手背橈側の軽微な感覚障害がみられる。
❷圧迫機序から土曜の夜麻痺(saturday night palsy),ハネムーン麻痺とよばれる。
【4】総腓骨神経麻痺:膝窩から腓骨骨頭部で総腓骨神経が圧迫されて生じる。
❶前脛骨筋麻痺による下垂足(foot-drop),鶏歩(steppage gait),足背と下腿外側
関連リンク
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- 新臨床内科学 第10版/10 圧迫性および絞扼性ニューロパチー
- 新臨床内科学 第10版/手根管症候群
- 新臨床内科学 第10版/2 肘部尺骨神経障害
- 今日の整形外科治療指針 第8版/尺骨神経麻痺(上肢全体について)
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