診断のポイント
【1】45~65歳までの若年に多く発症。
【2】精神症状や行動異常,言語障害が前景に立つ認知症。
【3】行動障害型(前頭側頭型認知症)と失語型(意味性認知症および進行性非流暢性失語症)を包括する臨床診断名。
【4】遂行機能障害とは,“要領・手際の悪さ”であり,目標を定め,その実現に向けて計画を立て,段取りを踏んで実行ができないことをいう。
【5】運動ニューロン症状やParkinson症状の合併に留意。
症候の診かた
【1】行動障害型前頭側頭型認知症:RascovskyらによるFTDC基準の使用が認知症診療ガイドライン2017でも提唱されている。診断の要点は,表1図のとおりである。
【2】意味性認知症
❶語義失語(物品呼称障害と単語理解の障害)
■対象物への知識の障害(ヒントによる語頭音効果がなく,再認障害も特徴)。
■表層性失読(海老を「カイロウ」と読む逐次的錯読)。
■失書(化粧を「毛勝」のごとく同音異義な錯書)。
❷復唱は保たれ,流暢性の発語で,発話(文法・自発語)は保持される。
【3】進行性非流暢性失語症
❶発語における失文法もしくは努力性で淀みのある発語,不規則な音韻の誤りや歪み(外国人様のアクセント)を呈する進行性の非流暢/失文法型失語。
❷対象物の知識と単語の理解は保たれるが,文法的に複雑な文章の理解に障害がみられる。
検査所見とその読みかた
【1】神経心理検査:行動障害型では前頭葉機能評価の追加が必要であるが,現状は診断特異的に使用できるものはない。
【2】言語機能評価
❶失語のタイプ判定に必須である。
❷意味性認知症評価目的に発案されたPyramids and Palm Trees testなどもある。
【3】脳画像(図1図)
❶行動障害型前頭側頭型認知症
■CT・MRIでは前頭葉優位で前頭葉・側頭葉の限局的な萎縮を示す。
■脳血流SPECT・PETでは前頭葉や側頭葉前部に代謝や血流低下を認