診療支援
診断

Wilson病
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Hepatolenticular Degeneration (Wilson Disease)
宮嶋 裕明
(浜松医科大学教授・第1内科)

診断のポイント

【1】幼児期以降の急性・慢性の肝障害,学童期以降の神経症状,思春期以降の精神症状。

【2】Kayser-Fleischer角膜輪。

【3】血清セルロプラスミンが20mg/dL以下。

【4】1日尿中銅排泄が100μg/24時間以上。

【5】肝臓の銅濃度が250μg/g乾重量以上。

症候の診かた

【1】肝機能異常:あらゆる年齢でのさまざまな肝機能異常で本疾患の可能性がある。

【2】神経症状:6歳以降に進行性の神経症状(言語障害,会話中の流涎,動作時または姿勢時の振戦が多い)では本疾患を疑う。

【3】精神症状:思春期以降のうつ症状,行動異常,情緒不安定などの精神症状では本疾患を疑う。

【4】Kayser-Fleischer角膜輪:認められれば,本症が強く疑われる(図1)。

検査所見とその読みかた

【1】血清セルロプラスミン:10mg/dL以下では本症が強く疑われる。10~20mg/dLでも本症を鑑別しなくてはならない。まれに本症でも血清セルロプラスミンが正常のことがある。

【2】1日尿中銅排泄:100μg/24時間以上は本症の診断的価値が非常に高い。

【3】肝臓の銅濃度:肝生検により肝臓の銅濃度が250μg/g乾重量以上であれば,本症と診断できる。

確定診断の決め手

【1】遺伝子検査で,ATP7Bの変異が両方のアレルに認められれば確定診断できる。

【2】ただし,十数%の本症患者では変異が同定できないことがある。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】無セルロプラスミン血症

❶5~35歳の不随意運動では血清セルロプラスミン値を測定することが重要である。

❷血清セルロプラスミン値が0あるいは3mg/dL未満をとるが,頭部・腹部MRI T2強調画像で基底核,視床,小脳歯状核,肝臓に低信号域を認める点が異なる。

確定診断がつかないとき試みること

【1】ペニシラミン負荷試験:小児で行う。負荷試験で尿の銅排泄が1,6

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