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■肝・胆道・膵領域の最近の動向
持田 智
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科)


 悪性新生物が死因である症例の臓器別内訳は,2013年に膵癌が4位,肝癌が5位と順位が逆転して7年が経過した。しかし,肝癌も含めて,肝・胆道・膵領域の悪性新生物は,総じて予後不良である実態に変化していない。

 2014年に直接型抗ウイルス薬(direct-acting antiviral:DAA)が導入され,C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)はほぼ全例で排除可能になったが,ウイルス排除(sustained viral response:SVR)後の肝発癌が問題になっている。B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)はコントロールできても排除は不可能で,これに起因する肝癌は減少していない。生活習慣病である非アルコール性ないしアルコール性の脂肪性肝疾患に起因する肝癌が増加している。肝癌の治療では,分子標的薬が次々と登場しているが,免疫チェックポイント阻害薬はいまだ利用ができず,進行肝癌の治療に難渋する実態は変わりがない。また,胆道・膵領域の悪性新生物に関しては,その症例数は増加しているものの,治療法に大きな進歩はないのが実態である。肝・胆道・膵領域の悪性新生物では,その予後を向上させるためには,早期発見のための診断体系を拡充する以外に方策がないのが現状である。その中で,血液を用いた悪性新生物の網羅的遺伝子診断などが急速に進歩しており,この領域での診断体系は大きく変化する兆しがある。

 一方,学会,厚生労働省研究班などが中心となって,悪性新生物のみならず,難治性疾患などの希少疾患も含めて,次々とガイドラインを作成し,必要に応じてその改訂が続けられている。肝硬変,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver diseases:NAFLD),胆石,胆管炎,急性ないし慢性膵炎など,頻度の高い肝・胆道・膵疾患に

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