診療支援
診断

食道アカラシア
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Esophageal Achalasia
引地 拓人
(福島県立医科大学附属病院内視鏡診療部・部長)

診断のポイント

【1】好発年齢:20~60歳台。

【2】症状:嚥下障害,胸痛,食物の逆流,体重減少。

【3】食道造影:食道下部のくちばし状のスムーズな狭窄と口側の拡張,造影剤の通過遅延。

【4】内視鏡検査:食物残渣の貯留を認め,食道胃接合部癌などの器質的疾患を認めない(図1a)。

【5】食道内圧検査:下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)圧の上昇,食道蠕動波の消失。

症候の診かた

【1】長期にわたる嚥下障害がみられる。

【2】食道胃接合部を内視鏡は通過できるが,通過の際に抵抗を感じる。

【3】食道内の残渣が逆流し,嘔吐をきたす。また,誤嚥による肺炎を起こす。

【4】進行した場合には,食事の摂取不良から体重減少をきたす。

検査所見とその読みかた

【1】食道造影:食道下部のくちばし状のスムーズな狭窄と口側の拡張が特徴的である(図2)が,他の検査法で食道胃接合部癌の否定が必要である。

【2】内視鏡検査:健常者でみられる柵状血管全体像は観察されず,深吸気時に全周性の下部食道への放射状のひだ像が観察される(図1b)。また,食道胃接合部癌の否定も重要である。

【3】食道内圧検査:下咽頭から胃までの連続した圧測定が可能な高解像度食道内圧測定(high resolution manometry:HRM)が有用であり,LES圧の上昇,蠕動波の消失,嚥下性弛緩の欠如,同期性収縮波などの所見から,他の食道運動機能障害との鑑別診断ができる(図3)。

確定診断の決め手

【1】食道内圧検査での特徴的所見で確定診断を得る。

【2】食道内圧検査を施行できない場合には,食道造影検査と内視鏡検査を組み合わせることで診断を得る。

【3】食道胃接合部の器質性疾患(癌,粘膜下腫瘍など)の否定にはCTが有用である。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】胃食道逆流症(gastro esophageal re

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