診断のポイント
【1】嘔吐直後の吐血を認める。
【2】多くは,大量飲酒後の嘔吐時に生じるため,病歴の把握が重要。飲酒以外にも激しい咳嗽や,妊娠悪阻が原因となることがある(表1図)。
【3】上部消化管内視鏡検査にて,食道・胃接合部に粘膜裂傷を認めればMallory-Weiss症候群と診断できる(図1a図)。食道・胃内に新鮮血の貯留を認めることが多い。
【4】粘膜層のみの損傷では線状裂創,粘膜下層以下まで損傷が及んでいる場合は,紡錘形裂創となる。輸血や内視鏡的止血術を必要とした症例は紡錘形裂創が多い。
【5】上部消化管内視鏡検査時の嘔吐反射時に,同様の裂傷を噴門部に生じることがある。
緊急対応の判断基準
【1】出血部位の確認と止血処置:緊急の上部消化管内視鏡検査が必要となる。自施設内で緊急内視鏡検査が不可能な場合には,高次医療機関へ搬送する。
【2】循環動態の安定:出血量が多く,ショックとなっている場合には輸血対応可能なルートを確保して循環動態の安定に努める。
症候の診かた
【1】激しい嘔吐に引き続き,吐血を認める。
【2】時に,下血も認める。
【3】バイタルサインにて出血の程度を把握する。
検査所見とその読みかた
【1】上部消化管内視鏡検査
❶出血点の部位,性状,出血のパターンが確認できる。出血点が確認され,出血が持続している場合には,止血処置を行う。
❷裂創発生部位は,Zeiferによって3群に分類されている。
■Ⅰ群:食道限局型(9.6%)。
■Ⅱ群:胃限局型(66.7%)。
■Ⅲ群:食道・胃併存型(23.6%)。
【2】血液検査:併存する疾患による異常値を認めることはあるが,本疾患に特有な所見はない。他の消化管出血をきたす疾患同様に貧血や低蛋白血症を認めることはあるが,発症直後では貧血所見を呈することはまれである。
確定診断の決め手
【1】病歴聴取:先行する悪心・嘔吐に引き続いて認めた吐血であること。
【2】上部消