診療支援
診断

急性虫垂炎
Acute Appendicitis
桑原 隆一
(兵庫医科大学炎症性腸疾患学講座外科部門)

診断のポイント

【1】すべての年代に起こりうるが10~20歳台に多い。

【2】心窩部から右下腹部に向かって腹痛が移動することが多い。

【3】発熱はあるが高熱はまれ。

【4】食欲不振,嘔気,嘔吐を認める。

緊急対応の判断基準

 虫垂炎は軽症なものから表1のように分類される。穿孔を生じた場合,腹部症状がむしろ軽快する症例がある。このまま放置すると敗血症性ショックを生じることがあり,手術可能な施設での加療が必要である。

症候の診かた

【1】腹痛

❶発症初期は心窩部痛があり,その痛みが右下腹部に移動することが多い。McBurney点(臍と右上前腸骨棘を結んだ外側3分の1の点)やLanz点(左右上前腸骨棘を結ぶ右側3分の1の点)に圧痛を認める。

❷炎症が腹膜に波及すれば筋性防御やBlumberg徴候(反跳痛)などの腹膜刺激症状を認めるようになる。

【2】発熱:発熱は37~38℃であることが多いが,39℃以上を示す場合は膿瘍形成や腹膜炎などを考慮する。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査:白血球増多,好中球増加,核の左方移動が高頻度に認められる。CRPの上昇も認められるが初期では上昇しないこともある。

【2】腹部CT検査:虫垂の腫大,周囲の炎症の波及が確認できる(図1)。虫垂根部の糞石や膿瘍,虫垂穿孔の診断も可能である(感度,特異度ともに95%以上)。

【3】腹部超音波検査:虫垂の腫大,膿瘍形成,糞石が確認できる(感度,特異度ともに90%以上)。

確定診断の決め手

【1】右下腹部痛(心窩部痛から移動する)。

【2】白血球数の増加,核の左方移動を認める。

【3】腹部CT,超音波検査での虫垂の腫大,膿瘍形成,糞石の確認を行う。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

 鑑別診断としては結腸憩室炎,右側結腸癌,骨盤内炎症性疾患,婦人科疾患(卵巣囊腫軸捻転,子宮外妊娠など),尿路結石症などがある。基本的にはCTもしくは超音波検査での

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