診療支援
診断

大腸癌
Colorectal Carcinoma
斎藤 豊
(国立がん研究センター中央病院・内視鏡センター長)

診断のポイント

【1】免疫学的便潜血法

❶対策型検診としての大腸癌検診として免疫学的便潜血法(fecal immunochemical test:FIT;2日法)が行われている。1回でも陽性であれば精密検査としての全大腸内視鏡検査(total colonoscopy:TCS)が推奨される。大腸癌検診は死亡率減少におけるエビデンスが確立されている数少ない癌検診の1つであるが,検診受診率の低迷が問題である。

❷早期大腸癌や深部結腸の進行癌ではFIT陽性とならないことが多い。無症状のこともあるため,血便や便通異常を認めた場合はTCSの適応である。

【2】全大腸内視鏡検査(TCS)

❶大腸癌の診断にはTCSが最も診断精度が高い。術前検査には注腸あるいはCTコロノグラフィ,腫瘍マーカーを含めた生化学検査を実施する。

❷表面型早期癌においては治療前に生検を施行すると,線維化の影響で内視鏡治療が難しくなる。生検せずに内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)や内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)が可能な病院へ紹介する。

❸第一親等に大腸癌家族歴がある場合や,若年発症(50歳未満)の家族歴がある場合,高危険度群となるためTCSを一度は検討する。一般に大腸癌のリスクは50歳以降で高くなるがそれ以前の精査も検討する。

【3】遺伝性大腸癌:Lynch症候群や家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)などの遺伝性大腸癌は全大腸癌の5%程度とされる。大腸以外にも癌を発生する可能性があり全身スクリーニングが必要である。また遺伝子診断や家族のカウンセリングも必要であり遺伝外来の受診が望ましい。

緊急対応の判断基準

 腸閉塞の症状がある場合:ステントや減圧チューブが必要となる

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